11人のシンガーが届けるアメリカ劇場音楽の魅力
ニューヨーク在住の経験が長く、オペラはもとよりポップス曲やミュージカル曲などにも新たな生命を吹き込むクロスオーヴァー・シンガーとして活躍中のソプラノ、柴田智子。
11月12日には新国立劇場でドニゼッティ作曲の知られざる“バックステージもの”喜劇オペラ《ビバ! ラ・マンマ》に自己中なプリマドンナ役で出演することでも話題を集めているが、12月に開催する、彼女のライフワークである「米国の劇場音楽を日本の聴衆に紹介する」アメリカン・シアター・シリーズの第3弾にも注目したい。
この公演で紹介されるのは6人のアメリカ人作曲家による作品の数々。コンサートの前半は、どちらかといえばクラシック寄りの作曲家のもの。まずは、ガーシュウィンより5歳上のD.ムーアが西部開拓時代の史実を素材に1956年に書き上げた純愛オペラ《ベイビー・ドウ(子鹿)のバラード》の抜粋。プッチーニやワーグナーを思わせる旋律がアメリカならではの超絶リズムで埋め尽くされる。加えてオペレッタで人気を博したV.ハーバートの作品も。さらに20世紀のバーバーの代表作《アントニーとクレオパトラ》より〈Oh, Give me my robe〉なども演奏される。
後半はエンターテインメント性が強い作品が選ばれた。ガーシュウィン《ポーギーとベス》より〈サマータイム〉、バーンスタイン《キャンディード》からはコロラトゥーラ・ソプラノの超絶技巧アリアとして知られる〈Glitter and be Gay〉。存命している巨匠S.ソンドハイム作品は《カンパニー》や《リトル・ナイト・ミュージック》といったミュージカルからのナンバーが取り上げられる。前後半あわせて実に30曲以上が披露されるのだ。
公演監修は広渡勲が務め、林田直樹がナビゲート、そして柴田は企画、構成、ステージングを担当する。歌手は柴田のほか、浅川荘子、安陪恵美子、大津佐知子、富永美樹、中島佳代子(以上ソプラノ)、勝倉小百合、田辺いづみ(以上メゾソプラノ)、蛭牟田実里(ヴォーカル)、杉野正隆(バリトン)、河野鉄平(バス)と総勢11人が出演。英語のリズムの楽しさを体感できるコンサートになるに違いない。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2017年11月号より)
2017.12/22(金)18:30 豊洲シビックセンターホール
問:TSPI 03-3723-1723
http://www.tspi.co.jp/