“揺れ動き、変容するもの”をベースに表現
開場20周年を迎える新国立劇場は「BUTOH」として世界に知られる日本が生んだ身体芸術・舞踏を特集し、「舞踏の今」と題して2つの世界的ダンスカンパニーの作品を上演する。その第1弾が天児牛大率いる山海塾だ。
山海塾は1975年に創設され、80年以降45ヵ国700都市以上で公演し、“コンテンポラリーダンスの殿堂”と呼ばれるパリ市立劇場との共同制作を30年以上続けている。「重力との対話」を掲げ、洗練された美の世界を造形し、世界中で称賛を浴びてきた。
今回披露するのは2015年に北九州で世界初演された『海の賑わい 陸(オカ)の静寂―めぐり』(演出・振付・デザイン:天児、音楽:加古隆、YAS-KAZ、吉川洋一郎)。モティーフは2億5千万年前に日本の海中で繁栄していた生物で、今は化石として発見されるウミユリ。天児はこの「とてつもない時間の流れ」から「不動のものはなく、常に揺れ動いているフラジャイルなものが我々のベースにある」と捉える。そして「賑わいとは生きること、静寂とは死んでいること」だと定義し、「自然史的なものを説明するのではなく、人や感情、希望、絶望といったものを、いわば賑わいと静寂とを対比させながら一つの作品にしたい」との願いをこめて創作したと話す。
初演から2年を経て世界ツアー、絶賛開催中。天児は踊りこんでいくうちに「硬さが取れて醸成されてくる」と手ごたえを語る。研ぎ澄まされた美を湛える深遠かつ壮大な時空に浸りたい。
文:高橋森彦
(ぶらあぼ2017年11月号より)
※出演を予定していた天児牛大は、体調不良のため出演できなくなりました。なお、この変更に伴うチケットの変更及び払い戻しはいたしませんので、ご了承ください。11月26日(日)のポストパフォーマンス・トークの開催については、現在調整中です。詳細は下記、新国立劇場のウェブサイトでご確認ください。
2017.11/25(土)、11/26(日)各日14:00 新国立劇場(中)
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/dance/