メモリアル・イヤーに聴く宗教音楽の金字塔
初期バロック最大の作曲家モンテヴェルディが誕生して450年の今年は、世界各地でアニバーサリー・イベントが目白押しとなっている。国内でも様々な演奏会が企画されているが、最も注目される公演のひとつが、コンチェルト・イタリアーノによる「聖母マリアの夕べの祈り」だ。
鍵盤奏者リナルド・アレッサンドリーニが1984年に創設したこのアンサンブルは、言葉の劇的な表現を重視した官能的とも言えるアプローチで、17〜18世紀の音楽の演奏に新機軸をもたらした存在である。特にイタリアのバロック音楽の解釈において彼らが及ぼした影響は計り知れない。
30年にわたりヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂楽長を務めたモンテヴェルディ。彼がマドリガーレやオペラなどで培ったあらゆる書法を注ぎ込んだ代表作が、今回演奏される1610年出版の「聖母マリアの夕べの祈り」である。歌劇《オルフェオ》にも登場したコルネット、トロンボーンなどによる輝かしいファンファーレに始まり、世俗的な薫りすら感じさせる独唱・重唱あり、最大10声となる合唱による詩編曲やマニフィカトあり、と聴きどころ満載。グレゴリオ聖歌を核として発展してきた教会音楽史のひとつの頂点に位置するこの晩課のための音楽を、声楽・器楽ともに精鋭揃いの現代最高のアンサンブルで聴くことのできる今回の機会。サン・マルコにも鳴り響いたであろう、そのサウンドをぜひ体験してみたい。
文:杉村 泉
(ぶらあぼ 2017年5月号から)
6/3(土)16:00 神奈川県立音楽堂
問:チケットかながわ0570-015-415
http://www.kanagawa-ongakudo.com/