岡本誠司(ヴァイオリン)

昼と夜で愉しむヴァイオリンの美しき小品

©JUN TAKUMI
©JUN TAKUMI
 第19回J.S.バッハ国際コンクールにおいて、弱冠20歳でアジア人初優勝を飾った岡本誠司。日本期待の若手ヴァイオリニストが、第一生命ホールで同じ日の昼と夜に異なるプログラムで2公演を行う。
 11時開演の昼の部は『雄大と行く 昼の音楽さんぽ』の第8回。音楽ライターの山野雄大がナビゲートする同ホールの人気シリーズだ。岡本は今回、「ヴァイオリンが歌うロマンス」をテーマに、8作品を約90分にわたって披露する。
「昼公演で、お客様の層の中心が主婦の方々とうかがって決めたテーマです。演目は、クライスラー『愛の喜び』&『愛の悲しみ』で始めて、最後はエルガー『愛のあいさつ』で締める流れ。他にも、ずっと弾きたかったクララ・シューマン『3つのロマンス』、2015年のシベリウス国際コンクールの時に出会ったシベリウス『ロマンス』など、思い入れの深い作品を選びました。そしてハイライトが、シマノフスキの最高傑作のひとつ『神話—3つの詩』。ギリシャ神話を題材にした複雑な作品ですが、今回は山野さんとのトークで説明もしますので、あえて全曲の形でお届けします」
 18時30分開演の夜の部は『630コンサート〜充実の60分〜』。約1時間のリサイタルなので、仕事帰りのリフレッシュにもお薦めの公演だ。こちらのテーマは、「フランスのエスプリ」。演目には、ファリャ「スペイン舞曲第1番」、プーランク「ソナタ」、ショーソン「詩曲」、ラヴェル「ツィガーヌ」という近現代の名曲が並ぶ。
「昼公演との繋がりを意識してプログラミングしました。その象徴が、シマノフスキと対をなすショーソン『詩曲』。ストーリー性があるこの2つの作品を同じ日に弾くことで、お客様と自分自身の双方に新たな発見が生まれれば嬉しいです。また、この『詩曲』と、最後に弾く『ツィガーヌ』は、フランス音楽の大家ジェラール・プーレ先生にレッスンを受けた作品。先生の教えをいかして、作曲家が音符の間に込めた言葉や想いを丹念に掬い上げたいです」
 今回は、アンサンブルを中心に国際的に活躍する上田晴子が両公演でピアニストを務めるのも聴きどころだ。
「今回が初共演になります。昼公演で弾くスーク『愛の歌』をはじめ、選曲にも多くの素晴らしいアドバイスをいただきました。カントロフ、デュメイ、シャルリエなど錚々たる名手と共演を重ねてきた上田先生から、ひとつでも多くのことを学べるように頑張ります」
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ 2016年11月号から)

雄大と行く 昼の音楽さんぽ 第8回 ヴァイオリンが歌うロマンス
11/2(水)11:00
630コンサート〜充電の60分〜
11/2(水)18:30
第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
http://www.triton-arts.net