制作発表〜いずみホール・オペラ 2016《ドン・ジョヴァンニ》

 いずみホールが9月3日、いずみホール・オペラ2016 モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》を上演する。
 これに先立ち、いずみホールで制作発表が行われた。
(2016.7.26 いずみホール Photo:M.Terashi/TokyoMDE)

 コンサートホールでのオペラ上演の可能性を追求してきたいずみホール(運営:一般財団法人住友生命福祉文化財団)は、大阪城公園にほど近い場所に位置し、理想の音場の原点をウィーン・フィルの本拠地「ウィーン楽友協会大ホール」に求めた、客席数821席のクラシック音楽専用ホール。

 今回上演する《ドン・ジョヴァンニ》は、河原忠之がプロデュースと指揮を、粟國淳が演出を務める。これは、2013年《シモン・ボッカネグラ》や、14年《フィガロの結婚》、15年《魔笛》と同じ。ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団が管弦楽を務め、大阪文化祭賞優秀賞を受賞した《フィガロの結婚》にも出演した歌手4人(黒田博、澤畑恵美、石橋栄実、西尾岳史)が再登場するなど、いずみホール・オペラのこれまでの立役者が一堂に会しての上演となる。
 これについて演出の粟國は「《フィガロ》がうまくいった、ということもあります。ただそれだけでなく、《ドン・ジョヴァンニ》をやる上でもう一度すべてを組み直す過程で、やはり一人ひとりがその役をわかって演じ歌うことができた《フィガロ》を振り返ると、これだけの歌手陣を集めるのは、たとえ海外でもできないレベル。河原忠之さんはモーツァルトの作品における声のバランスを重視されるので、その作品にあった、声やキャラクターにあった歌手が選べて、レベルも高い歌手がそろっているのも、いずみホールオペラの魅力」と語る。

粟國淳(演出)

粟國淳(演出)

 また粟國は、いわゆる通常のオペラハウスやそれに準ずるホールでの公演とは異なるコンサート専用ホールでのオペラ上演には、そこでしかできないものもあると言う。
「舞台と客席とが近い空間の中でお客様に聴いて観ていただけるということで、本当の意味での心理的な、ストーリーの裏面を表現をできるのではないか。そのためには歌がもちろん主役になりますが、ダイレクトに伝わるものを上演しようとしたとき、モーツァルトの作品のような規模だと、いずみホールくらいの空間が一番あっていると思うんです。テクニック一つひとつが聞こえてくるというのもいずみホールの魅力ですね」
 しかし、困難が伴うのも事実。
「《ドン・ジョヴァンニ》で一番難しいところは、フィナーレの地獄落ちをどうするか。『黒田さん消えてぇ!』という感じですが(笑)。装置や照明、衣裳の難しさはありますね。いわゆる通常の舞台のようにつくりすぎちゃうと、オケとのバランスなどもあり、中途半端さが出てきてしまう。演出家として悩むところです」
 ホール・オペラの難しさを感じながらも、違う意味で、演出家の理想のところにいける面白さもある。
「歌手が本当の意味で役者にならなければいけない。メロディだけではダメ!という核心をつくことができる。何もない、そんなに動けないからこそ、歌や表情でドラマを作り上げていくことが大事。全員が同じ方向をみて、同じレベルで、何もない空間の中でドラマを演じ、歌い、表現する、という一番の原点でお互いに勝負できる」
 具体的に今回の演出はどのようになるのだろうか。
「粟國の演出手法として、この作品をどう料理してやろうかなと思ってやっていますが、オペラはテンポや言葉、ドラマも決まっていて、お芝居のように台本を書き直したりということはできない。どこか料理人と一緒で、素材が決まっているなかで、自分にしか出せない味で料理してやろうと思っている。僕が料理するとこの作品の意味がこうで、こういう味のオペラになりますというのを出したい。ダ・ポンテとモーツァルトが何を考えてどう上演していたのかを改めて見直して、より芝居の世界、間の取り方、どのタイミングで振り向くのか、どう相手を見るのか、そうした作り方が一番要求されると思う」

 この作品の面白いところは、ドン・ジョヴァンニが太陽のような存在であることだという。
「いつも光り輝いて中心をキープしておかずにいられない。ドン・ジョヴァンニが動きだすと周りの銀河の人々が崩れ始めてしまうわけで、絶対にかっこよくめげずに、時には茶目っ気もあり、我が行く道をゆく絶対にぶれない演じ方をしなければいけない。逆に周りのキャラクターは、ドン・ジョヴァンニに出会ってしまったことで、自分の人生が狂わされる。しかし、それはそれぞれの登場人物たちの内面の発見でもあり、それでストーリーが動いていく。この作品の面白さはここにある。彼の周りが動くことで、登場人物たちの明暗、いろんな面が見えてくる。
 ドン・ジョヴァンニが本当にあの世につれていかれたらどうなのだろうか?そこでも笑っている、手に負えないのかもしれない」

石橋栄実(ドンナ・アンナ)

石橋栄実(ドンナ・アンナ)

 石橋栄実は、ザ・カレッジ・オペラハウス公演でこれまで二度ほど《ドン・ジョヴァンニ》出演を経験しているがドンナ・アンナを歌うのは12年振りという。
「私自身はオペラの団体に所属していないこともあり、他の歌手の方たちと会えることも楽しく、素晴らしい方々が集まるので、その中に混ぜていただくことを幸せに思います。ドンナ・アンナはとてもハードな役。復讐のアリアが歌いきれないと思い、体力をつけようとジムに通ったことを覚えています。今回は、いままでよりも声も成長していると信じたいし、ドンナ・アンナを自身一体となって歌えるのではないかと思っていますが、3人の女性が登場するなかで、三者三様、ドン・ジョヴァンニにどう影響をうけたかをクリアにし、ドン・ジョヴァンニがより立体的になるように演じたい。間違いなくいい公演になると思いますので、頑張ります」
西尾岳史(レポレッロ)

西尾岳史(レポレッロ)

 レポレッロ役はとにかくドン・ジョヴァンニにどこまでふりまわされるか、とても人間くさい役だと感じていると語る西尾岳史は「東西から百戦錬磨、フレッシュな方、全ての歌手の方が勉強して稽古場にこられている。立ち稽古の初日からいきなり通し稽古のような感じで進む。客席との距離が近いので表情がよく分かるので、細かい表情をはっきり分かるように、人間くさくやりたいと思います。《ドン・ジョヴァンニ》にはマゼット役で出演したことがあるのですが、《ドン・ジョヴァンニ》は同じ作品のなかでいろんな役、角度からできるので楽しみ」との抱負を語った。

■いずみホール・オペラ 2016モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》K.527(台本L.ダ・ポンテ)
〈原語上演・字幕スーパー付〉
9月3日(土) 14:00 いずみホール

プロデュース、指揮:河原忠之
演出:粟國淳

ドン・ジョヴァンニ:黒田博
騎士長:ジョン・ハオ
ドンナ・アンナ:石橋栄実
ドン・オッターヴィオ:清水徹太郎
ドンナ・エルヴィラ:澤畑恵美
レポレッロ:西尾岳史
マゼット:東平聞
ゼルリーナ:老田裕子

ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団

問: いずみホール チケットセンター06-6944-1188
http://www.izumihall.jp

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