解釈を『0(ゼロ)』から見直す
8月11日(木・祝)から「あいちトリエンナーレ2016〜虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」が74日間にわたって開催される。なかでも注目されるのが、9月17日(土)、19日(月・祝)に愛知県芸術劇場で上演されるプロデュースオペラ、モーツァルト《魔笛》。
8月2日、その稽古の一部が報道陣に公開された。
(Photo:M.Terashi & J.Otsuka/TokyoMDE)
本作で演出・美術・照明・衣裳を手掛ける勅使川原三郎が稽古の最初に取り組んだのは、ワークショップ。勅使川原は始終歌手に語りかけながら、ピアノ伴奏にのせて稽古場内を歩かせる。
このワークショップの目的は、人間が一人ひとり、日によって身体のコンディションが異なるため、身体の状態を「0(ゼロ)」にすること。
「オペラのそれぞれのシーンを作る前に“歩き”だけをする稽古時間は通常確保できない。それは、オペラにとって一般的に演出がまず第一に考えられているから。今回は幸運にもワークショップの時間がとれた」と語る勅使川原は「足の裏、体内、関節の感覚を感じる身体訓練は他ではやっていないことだろうが、これからの稽古で必要なこと」と説明、「歌手としての潜在能力、ポテンシャルをより活かすために、まず身体にフォーカスする。余分な力を抜いた状態で、舞台に立つ準備、あらゆることを引き受けられる準備、許容力のあるスケールの大きさ、そういった準備ができたら素敵だと思う。
言い過ぎかもしれないが、他の演奏者、出演者よりも先取りしてワークショップすることはとても意義あること。みなさんの身体ができあがってきているとしたら、これから参加する指揮者、演奏家、合唱団の方々に対して、なんらかに良い影響を与える。面白い出会い、創造的な出会いになるはず」と語る。
今回の演出について勅使川原は「新しいものを創りたい。いまを生きている私たちが何を大事にするかを問いかける作品にしたいし、過去を踏襲せずいままでの演出、解釈を『0(ゼロ)』から見直す」と意気込みを語る。具体的には音楽を生き生きとしたものにするために「空間的、抽象的なアプローチをしようと思っている。例えば、舞台装置はリング(輪)を多様した抽象的な空間設定にした」
また、「演劇的要素を入れすぎてしまうと音楽が崩れてしまう」と語る勅使川原は「歌手には歌に専念してもらいます。ドイツ語で語ったり演技をしなくても、歌手は歌っているだけで内面を表現できます。ストーリーをわからせるにはナレーションで十分(ナレーションは日本語)。佐東利穂子と東京バレエ団には音楽と歌手の間で空気のように踊って、出演者一人ひとりのキャラクターの二重性を表現してもらう」との構想も述べた。
■あいちトリエンナーレ2016 プロデュースオペラ
モーツァルト/《魔笛》
(全2幕・ドイツ語上演・日本語字幕付き・日本語ナレーション)
9/17(土)、9/19(月・祝)各日15:00 愛知県芸術劇場
演出・美術・照明・衣裳: 勅使川原三郎
指揮:ガエタノ・デスピノーサ
管弦楽: 名古屋フィルハーモニー交響楽団
賢者ザラストロ:妻屋秀和
夜の女王:髙橋維
王子タミーノ:鈴木准
王女パミーナ:森谷真理
鳥刺しパパゲーノ:宮本益光
弁者&神官Ⅰ:小森輝彦
恋人パパゲーナ:醍醐園佳
ダンサー:佐東利穂子、東京バレエ団
合唱: 愛知県芸術劇場合唱団
他
問:クラシック名古屋052-678-5310
愛知県芸術劇場052-971-5609
http://aichitriennale.jp
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