重要なのは作曲家の響きの意図を明らかにすること
創立40周年の節目を迎えた東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団にとって、新たな扉を開くステージとなろう。世界的なバロック・チェロの名手として活躍を続ける一方、自ら主宰するオリジナル楽器によるオーケストラ・リベラ・クラシカ(OLC)をはじめ、数々の一線楽団に客演、近年は指揮者としても知られる鈴木秀美が、東京シティ・フィルの指揮台へ初めて登場。シューベルトの傑作交響曲である、第8番「ザ・グレイト」に挑む。
「雄大な叙事詩のような規模の大きさと、そこここに現れる、歌曲のように親密な雰囲気とのバランスが絶妙な作品」と、この作品を評する鈴木。「特に両端楽章の執拗な繰り返しには疲れるかもしれませんが、聴くうちに、必要な理由が分かると思います。そして、2つの中間楽章の魅力を言葉で表すことは難しい。ただ、彼にこんな音楽を書かせたものは何か。時の流れとは。人が生きるとは。様々に思い巡らされます」と語る。
今回は、さらに、鈴木がOLCと精力的に取り組んでいるハイドンの交響曲の中から、第103番「太鼓連打」を併せて披露。「オリジナル楽器でも、モダン楽器でも、基本的に目指すことは同じ。作曲家の響きの意図を、明らかにすることが重要です。時と場合によって、少し方法やバランスが異なることはあり得ますが、求めようとするイメージや音像が変わるわけではありません」。
東京シティ・フィルとの“化学反応”によって描き出される、鮮烈な作品像。体感しない手はあるまい。
文:笹田和人
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年1月号から)
第294回 定期演奏会
2016.1/16(土)14:00
東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp