石井漠・土方巽 国際ダンスフェスティバル『踊る。秋田2015』

秋田が生んだダンスの偉人を称えて


 日本のダンスにおける二人の改革者が同郷出身だということは、意外に知られていない。
 一人は日本のモダンダンスの父、石井漠。戦前日本の帝国劇場歌劇部でバレエを学び、ヨーロッパでダンスを学び、日本にモダンダンスをもたらした。ただの輸入ではなく、日本の表現を模索した作品を多く残している。また弟子である崔承喜を育て、彼女は故郷・朝鮮半島におけるモダンダンスの祖となった。石井は国の枠を越えて活躍した人である。
 土方巽は、1960年代に登場した舞踏の創始者のひとり。舞踏は「アジアからヨーロッパに輸出した、唯一のダンス」といえる。全ての身体をユニークな存在として捉え直す、欧米とは全く違ったオリジナルの動き。それは“BUTOH”として、ある種の哲学的な衝撃を持って世界的に受け入れられたのである。
 …という二人を故郷・秋田であらためて考えてみるフェスがこれ。
 目玉となる公演はふたつあり、ひとつはキテレツな動きが続々と連なっていくイデビアン・クルー『図案』。既成の概念にとらわれない動きは時代の改革者の視線だ。
 また大駱駝艦による美しい金粉の舞『クレイジー・オラエ』も登場する。大駱駝艦は「第29回国民文化祭・あきた2014」でも大人気を博したそうだが、舞踏が本来持っている猥雑な野太いエネルギーを抱えながらも現代的な感覚を融合させている希有な存在だ。
 フェスティバルは他にも様々な企画があり、秋田の偉人を検証する重要な機会となるだろう。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)

イデビアン・クルー『図案』 
11/12(木)18:30 秋田市文化会館
大駱駝艦『クレイジー・オラエ』
11/13(金)18:30、11/14(土)14:00 秋田市文化会館(小)
問:『踊る。秋田』実行委員会事務局018-874-9037 
http://www.odoru-akita.org