富山から発信!好評を博した『ミー&マイガール』再演

剣ビルが再び登場

 2011年より富山オーバード・ホールが発信する「オーバード・ホール名作ミュージカル上演シリーズ」は、ミュージカルの本場から演出・振付を招き、出演者はプロ、アマ問わず公募で選抜。これまでに『回転木馬』『ハロー・ドーリー!』『ショウ・ボート』といった名作ミュージカルの数々を上演、高い評価を得ている。11月12日より上演される『ミー&マイガール』は、13年にも上演され、好評を博した作品。主人公ビルに扮する剣幸は、かつて宝塚歌劇団月組トップスター時代にこの役を一年間の異例のロングランで演じており、2年前の上演時には、26年ぶりの当たり役への挑戦も話題を呼んだ。今年秋の宝塚OG公演『SUPER GIFT!』でも作品の名場面の抜粋を演じて喝采を浴びたばかりだ。
 去る10月27日都内稽古場での稽古から、第2幕を中心に取材した。
(2015.10.27 都内稽古場 取材・文:藤本真由 写真:片山貴博)

剣 幸
剣 幸

 稽古開始にあたり、囲み取材に応じた剣は、「2年前に演じたビルをまた演じられるのは大きなプレゼントをもらった気分。以前はどこかで笑わせなくてはと思っていたが、ビル自身が人間としておもしろいキャラクターであって、そのパワー、エネルギーに周囲が巻き込まれていってしまう、そのおかしさを見せていきたい。あくまで人間ビルとして存在することで、周囲だけでなく客席をも巻き込んでいければ。このシリーズは、ぜいたくに時間をかけ、場所を提供してもらって上質なものを作っており、オーバード・ホールの観客も、ミュージカルに対して新鮮でピュアな見方をしてくれる、そんな温かい感覚がある」と、富山発信の公演ならではの魅力を大いにPRした。

本作で最も盛り上がる第一幕ラスト「ランベス・ウォーク」の歌とダンス
本作で最も盛り上がる第1幕ラスト「ランベス・ウォーク」の歌とダンス

ビル役=剣幸(中央左) サリー役=野田久美子(中央右) お似合いのカップルだ
ビル役=剣幸(中央左) サリー役=野田久美子(中央右) お似合いのカップル

「宝塚時代と比べるとキレも体力もない」と笑う剣だが、その動きは衰えを感じさせない
「宝塚時代と比べるとキレも体力もない」と笑う剣だが、その動きは衰えを感じさせない

稽古場の熱気も最高潮!見ているだけで気分が高揚する「ランベス・ウォーク」
稽古場の熱気も最高潮!見ているだけで気分が高揚する「ランベス・ウォーク」

 立ち稽古が始まったばかりの稽古場では、第1幕に続き第2幕をリハーサル。下町育ちのビルを何とか貴族のお世継に教育すべく、家の歴史と伝統について、マリア公爵夫人(中尾ミエ)が説き、「ヘアフォードの栄光」のナンバーを歌い上げるくだり。威厳たっぷりにお説教する中尾マリアのかたわらで、剣ビルはといえば、トラの敷物を操って一人漫才したり、マリアを後ろから剣で突く真似をしたり、次から次へと笑いのツボが訪れる。剣の言葉通り、ビル自身がおもしろさのつまったサービス精神あふれるびっくり箱のような人間であることを自然と語るような演技になっている。先祖たちの霊も加わってのナンバーは、ハーモニーが心地よく響く。
 続いて、剣のビルと、宝田明扮するジョン男爵とが酔っぱらっておかしな会話を交わし、「愛は世界を回らせる」のナンバーをデュエットするくだり。べらんめえ口調の剣ビルと、ひょうひょうとした中に貴族ならではの重厚な存在感を漂わせる宝田ジョンの言葉の応酬に、またもや笑い出さずにはいられない。芝居をしているというより素でやりとりしているような、セリフというよりアドリブを連発しているようなナチュラル感がある。酔った二人が「ぐる」「ぐる」と言い合う箇所では、「僕は『るぐ』って言ってみる」と宝田が提案し、ますますおもしろい掛け合いに。再演ならではの深みを増した舞台への期待が大いに高まった。

オーバード・ホール名作ミュージカル上演シリーズ第6弾
『ミー&マイガール』
11/12(木)13:00、11/13(金)13:00、11/14(土)12:00・17:00、11/15(日)13:00 
オーバード・ホール 

出演:剣幸、野田久美子、宝田明、中尾ミエ、秋山エリサ、高山光乗ほか
演出:本間憲一
振付・演出協力:ロジャー・カステヤーノ
演奏:ミュージカルオーケストラTOYAMA

料金:大人5,000円 高校生以下2,000円(全席指定)
問:(公財)富山市民文化事業団076-445-5610 
特設サイト http://www.aubade.or.jp/static/special/mamg2/