
これまでハーゲン・クァルテットやフォーレ四重奏団といった世界的アーティストの出演も多かったTOPPANホールの新シーズン開幕コンサートだが、2026/27シーズンはひと味異なる公演が用意されている。それは「ベートーヴェンに魅せられて…」と題した一夜。2027年のベートーヴェン没後200年イヤーを見据えての企画だが、何と楽聖自身の作品は登場せず、ベートーヴェンが開拓したチェロ・ソナタの最大の後継者ブラームスのホ短調ソナタ(第1番)、ベートーヴェンが生涯を通じて探究し続けたピアノ・ソナタからシューベルトの第20番、そして若きベートーヴェンがあえて「作品1」を与えたピアノ三重奏曲からシューベルトの第2番が披露されるという、いかにもTOPPANらしい内容だ。
出演は初共演が楽しみな名手揃い。軸となるピアノのウィリアム・ヨンは、ソウルに生まれ13歳で渡米後、クリーヴランド管やミュンヘン・フィル等と共演し、ウィグモアホール等の著名ホールで演奏している。彼はオーストリアの音楽祭・シューベルティアーデの常連にしてそのピアノ・ソナタ全曲録音が絶賛されているだけに、本演目にはこの上なく相応しい。そして弦楽器は当ホールでの実績が際立つチェロの笹沼樹とヴァイオリンの毛利文香。共にソロと室内楽の両面で活躍し、桐朋学園と欧州で学ぶと同時に、それぞれ学習院大学と慶應義塾大学を卒業した視野の広さを持つ。ここは、ブラームスのソナタの深い憂愁、シューベルト最晩年の2曲の明朗さとドラマ、さらにベートーヴェンの影響を受けながらも一線を画す独特の寂寥感を味わいたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2026年9月号より)
TOPPANホール26周年
2026/27シーズン オープニングコンサート
2026.10/1(木)19:00 TOPPANホール
問 TOPPANホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com

柴田克彦 Katsuhiko Shibata
福岡県生まれ。音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。雑誌、コンサート・プログラム、Web、宣伝媒体、CDブックレットへの、取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)、 『1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集』(音楽之友社)。

