2026年はオーストリアの作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜91)の生誕270周年に当たる。同時に生地ザルツブルクで1773〜87年に暮らした家(通称「タンツマイスター(舞踏教師)ハウス」)が1996年、日本の第一生命をはじめとするスポンサーの支援を受け、国際モーツァルテウム財団(ISM=1880年9月20日設立)の主導で再建されてから30周年の節目でもある。

ザルツブルク市には「モーツァルトの家」が2か所ある。今も街の要衝であるマカルト広場8番地にある「モーツァルトの住家(Mozart-Wohnhaus)」は、観光客でごった返す賑やかな商店街となったゲトライデガッセ9番地にある生家(Mozart-Geburtshaus=ISMが1880年に一部を博物館に整えて公開)とは別の建物だ。モーツァルト一家は1階(日本流にいうと2階)の8部屋を使っていた。ヴォルフガング・アマデウスは25歳でウィーンに移るまで暮らし、映画『アマデウス』で使われた交響曲第25番(“小ト短調”と呼ばれる)やセレナード第9番「ポストホルン」、全5曲のヴァイオリン協奏曲、ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲、フルートとハープのための協奏曲、ピアノ協奏曲第9番「ジュナミ(ジュノーム)」、終曲の「アレルヤ」が有名なモテット〈踊れ、喜べ、幸いなる魂よ〉、歌劇《イドメネオ》などの傑作を生み出したのも、この家だった。当時の高名な音楽教師で、現在も高い評価を維持するヴァイオリン教則本の著者の父レオポルトは、1787年に亡くなるまで住み続けた。
第二次世界大戦中1944年の空襲で3分の2が破壊され、戦後はオフィスビルが建っていた。ISMは土地を買い戻して再建に着手し、1996年、18世紀当時の面影を伝える「モーツァルトの住家」がよみがえった。「モーツァルト・ハウス」のオリジナルは1711年から宮廷舞踏教師のロレンツ・シュペックナーが教室として使っていたため、「タンツマイスター・ハウス」と呼ばれていた。幸いオリジナルの設計図が残っていたため、ISMは忠実に再現するとともに、貴重な資料を現代の保存基準のもとで守り、博物館として整備し、一般に公開している。開館当初は日本製オーディオ機器による高音質の音源再生でも話題を呼んだ。
これを機に友好関係を築いた第一生命とISMは、これまでにも展示やコンサートを行ったり、2024年に約60年ぶりに改訂された『ケッヘル目録』の日本での記者発表を合同で実施したりするなどで関係を深めてきた。そして今年、特別記念イベント「国際モーツァルテウム財団コンサート モーツァルト『悠久の旋律』」を10月下旬から東京・札幌・大阪・名古屋・福岡で開催する。

演奏者はオーストリア側が2013年、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学在学中に結成されたアクツィオ・ピアノ・トリオ(ピアノ=クリスティーナ・シャイヒャー、ヴァイオリン=アレクサンドラ・マリア・ザイヴァルト、チェロ=アンネ・ゾフィー・ケッカイス)。日本からはNHK交響楽団の第2ヴァイオリン首席奏者を長く務めた後、国立音楽大学で後進の指導に当たり、指揮者としても活躍する永峰高志(ヴァイオリン)、桐朋学園大学と英国王立音楽院で学び、数々の国際音楽コンクールに上位入賞した実力を備えながら、早くから室内楽のエキスパートとして活躍してきた松実健太(ヴィオラ)の2人が出演する(※名古屋公演のみヴァイオリンは山田香子)。

演奏曲目はもちろん、オール・モーツァルト。ピアノ三重奏曲第2番ニ短調 KV 442(未完成)、ピアノ四重奏曲第1番ト短調 KV 478などのほか、2024年9月にドイツのライプツィヒ市立図書館で筆写譜が再発見された7楽章構成のセレナード ハ長調 KV 648「ガンツ・クライネ・ナハトムジーク」を聴けるのが最大の注目点だろう。使用されるのは、モーツァルト自身が演奏したと伝わる「コスタ・ヴァイオリン」とヴィオラ。コスタとは1750年前後にヴェネツィアやトレヴィーゾで活動したイタリアの歴史的名工、ピエトロ・アントニオ・ダッラ・コスタのこと。ウィーン時代のモーツァルトが愛奏した楽器とされる。およそ250年の時を超えて、その音色を実際の演奏で聴けることも、このコンサートならではの魅力となるだろう。


さらに会場内ではモーツァルトの妻コンスタンツェの姉、アロイジアの夫だった画家ヨーゼフ・ランゲ(1751〜1831)が描いた有名な肖像画「ピアノを弾くモーツァルト」のレプリカ、コンスタンツェから代々受け継がれてきた「モーツァルトの遺髪」が展示される。
オンライン予約は8月26日から受け付ける。
文:池田卓夫(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎)
★印写真=©Internationale Stiftung Mozarteum (ISM)

Message from the International Mozarteum Foundation
モーツァルト生誕270周年という記念すべき年に、第一生命ならびに日本の皆様との長きにわたる友情を、音楽を通じてお祝いできることは、私たちにとって何よりの喜びです。
モーツァルトの「悠久の旋律」を、ぜひ私たちと一緒にご体験ください。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。
国際モーツァルテウム財団 総裁
ヨハネス・ホンズィッヒ=エーレンブルク
【Information】
モーツァルト住家復元事業30周年 モーツァルト生誕270周年
国際モーツァルテウム財団コンサート モーツァルト「悠久の旋律」
2026.10/26(月)19:00、10/31(土)14:00 第一生命ホール
10/27(火)19:00 札幌コンサートホール Kitara 小ホール
10/29(木)18:30 大阪市中央公会堂 大集会室1F
10/30(金)18:45 名古屋/しらかわホール
11/1(日)14:00 福岡/NCBホール
入場無料・要事前申込(8/26(水)受付開始)
曲目/
モーツァルト:
ピアノ三重奏曲第3番 変ロ長調 KV 502
セレナード ハ長調「ガンツ・クライネ・ナハトムジーク」 KV 648 ※挿入曲あり
歌劇《フィガロの結婚》 KV 492より「失くしてしまったわ」 (ピアノ三重奏版)
ピアノ三重奏曲第2番(未完成)ニ短調 KV 442より第1楽章
歌劇《フィガロの結婚》 KV 492より「恋人よ、はやくここへ」 (ピアノ三重奏版)
ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 KV 478
カッサシオン ト長調 KV 63 (ピアノ三重奏版)
※やむを得ず変更になる場合がございます
問:モーツァルト「悠久の旋律」事務局 mozart-ticket@linkst.jp
https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/mozart/

