ヴァシリー・ペトレンコ率いるロイヤル・フィルが立川へ 辻井伸行とラフマニノフで再び共演!

左:ヴァシリー・ペトレンコ ©tarlova.com
右:辻井伸行 ©Yuji Hori

 立川市は、東京都の多摩地域の中心として長く発展を続けている。その立川に、多摩地域初の民間大型ホールとして2020年に開業したのが、立川ステージガーデンだ。約2500席という規模を持ち、2階客席後方の壁を開いて、野外ステージとつなげることもできる。ホールであり、シアターであり、野外劇場であり、ライブハウスであり、イベントスペースでもある。ジャンルを超越して、設置者の立飛ホールディングスが文化・芸術・スポーツを通じて地域貢献を目指す拠点のひとつとなる場所なのだ。

 昭和記念公園に隣接していて、緑が豊かで周囲の空間に余裕があることも、ホールの大きな特長だ。ピアニストの辻井伸行は、これまで2回にわたってこのホールで演奏するなかで、ホールを含めた周辺のエリア「グリーンスプリングス」一帯の雰囲気がとても気に入り、同名のソロ曲も作曲しているという。

 その辻井が、今年9月にはヴァシリー・ペトレンコ指揮のロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団と共演して、このホールに3回目の登場を遂げる。曲目は、ピアノ協奏曲のなかでもとりわけ多くの人に愛され、辻井の十八番でもあるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。2023年にこの指揮者とオーケストラが来日したさいにも、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番などで共演しているので、今回はさらに信頼を深めあって、この憂愁にみちた美しい旋律と華麗な響きをもつ名曲を聴かせてくれることだろう。

 ロイヤル・フィルは、英国の名指揮者トーマス・ビーチャムによって1946年に創立されたオーケストラで、ときの女王エリザベス2世から「ロイヤル」の称号を冠することを勅許されている。ルドルフ・ケンペやシャルル・デュトワなど、歴代の名シェフが築いてきた伝統を引き継ぎ、2021年に音楽監督に就任したのがヴァシリー・ペトレンコである。

 ロシア出身のヴァシリーは、2006年からロイヤル・リヴァプール・フィルの首席指揮者を15年間にわたってつとめ、鋭敏なセンスとキレのいい響きで高い評価を得た。続いてロンドンのロイヤル・フィルの音楽監督に就任、生地よりもイギリスのオーケストラとの縁が深いのが、キャリアの特徴となっている。この2つのオーケストラとは来日公演も重ねており、日本のファンにもおなじみの存在だ。

 当日の曲目はほかに、ニコライ・チェレプニンの交響的前奏曲「遠き王女」とチャイコフスキーの交響曲第5番。フランスの作家ロスタンの戯曲に基づく前者は、異国トリポリの王女への憧れが、崇高な愛へと昇華される吟遊詩人の物語という、珍しい作品。かたやチャイコフスキーの交響曲は、ラフマニノフのピアノ協奏曲とともに、説明不要の名曲中の名曲である。

 立川ステージガーデンのオープン以来、初の海外オーケストラの登場というだけに、客席は大いに沸くことだろう。

文:山崎浩太郎

ヴァシリー・ペトレンコ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 ピアノ:辻井伸行 立川公演
2026.9/11(金)19:00 立川ステージガーデン
問 立飛ホールディングス event@tachihi.co.jp
https://www.tachihi.co.jp


山崎浩太郎 Kotaro Yamazaki

1963年東京生まれ。演奏家の活動と録音をその生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書は『演奏史譚1954/55』『クラシック・ヒストリカル108』(以上アルファベータ)、片山杜秀さんとの『平成音楽史』(アルテスパブリッシング)ほか。
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