鈴木優人によるパイプオルガンとオーケストラが一度に味わえる! 新日本フィルとのタッグで贈る二刀流コンサート

©Marco Borggreve

 オルガンとオーケストラ、2つの響きを味わう演奏会がすみだトリフォニーホールで行われる。鈴木優人が、第1部でオルガン曲を演奏し、第2部で交響曲を指揮する「Play&Conduct」。指揮者でありオルガニストでもある鈴木の本領発揮の演奏会だが、この2部構成はマルチな活動をする彼にとっても初で、さらに、すみだトリフォニーホールに登場するのも、新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮するのも初めてという、初づくしのコンサートでもある。

 オルガン演奏と指揮は全く異なる演奏行為に思えるが、「音楽家の営みという点ではほぼ同じ。オルガンを弾くときは自分の中にオーケストラの奏者がいて、指揮するときはオーケストラがオルガンのよう」だと語る。そんな「Play」と「Conduct」の間を「どう繋げるか楽しく考えた」プログラムのコンセプトは、「我々の時代からブラームスを見て、そのブラームスの中にあるバッハを見る」。まず第2部での新日本フィルとの初共演に選んだのが、ブラームスの交響曲第4番だ。

 「第4楽章はバッハのカンタータ第150番を主題にしたパッサカリアです。パッサカリアはバロックの変奏形式ですから、交響曲全体がバッハへのオマージュとも言えるでしょう。第2楽章冒頭の主題をユニゾンで提示する書法もオルガン的。また第4楽章はオーケストラの音色のショーケース的な魅力もあります」

 第1部で演奏するオルガン曲のひとつは、ブラームスの最後の作品番号の曲「11のコラール前奏曲」だ。

 「瞑想的な曲が多く、深い精神性を感じざるを得ない作品です。特に最後の〈おお世よ、われ汝より去らねばならぬ〉は辞世の句のよう。11曲を一度に弾くのは久しぶりなので、通したあと自分が何を感じるかも楽しみです」

 「11のコラール前奏曲」の前後には、バッハの円熟の作品、“くさびのフーガ”と呼ばれる「前奏曲とフーガ」ホ短調BWV548を〈前奏曲〉と〈フーガ〉に分けて演奏する。

 「ブラームスの交響曲第4番と同じホ短調で繋がります。ホ短調は『マタイ受難曲』の調性でもあり、非常にシリアスでドラマティック。そんな壮大な〈前奏曲〉と受難曲のような〈フーガ〉ではさむと、『11のコラール前奏曲』が本当に夢心地に聴こえるのでは」

 ブラームスの交響曲の前に、これほどがっつりオルガン演奏を聴くことは普段ないだろう。誰にとっても新鮮な聴体験になりそうだ。

 「“神の楽器”オルガンの威厳ある音を感じたあと、交響曲はどう聴こえるでしょうね。バッハのホ短調に比べると、ブラームスの交響曲は案外繊細に聴こえるかもしれないし、逆にオーケストラの低音がさらにずしりと響くのかもしれない」

 どのように聴こえるか、その答えを客席でぜひ確かめたい。

取材・文:榊原律子

(ぶらあぼ2026年10月号より)

鈴木優人 × 新日本フィル Play&Conduct オルガンからオーケストラへ
2026.11/7(土)15:00 すみだトリフォニーホール
問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212
https://www.triphony.com


榊原律子 Ritsuko Sakakibara

東京生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了(音楽学)。編集プロダクション勤務を経て、2004年よりフリーランスのライター・編集者として音楽・舞台芸術のジャンルを中心に活動。各地の劇場やホールの友の会会報誌・情報誌の編集制作に長年携わる。現在はアーティストへのインタビュー、公演プログラムの編集、曲目解説の執筆などを行っている。