宮田大&横溝耕一が案内する音楽祭「AGIO vol.4」 〜名手たちが集う室内楽の3日間

左より:宮田大、横溝耕一 ©JUNICHIRO MATSUO

 日本のクラシック界の中心で活躍するアーティストたちが浜離宮朝日ホールに集結する「室内楽フェスティバル AGIO」も、今年で4回目の開催を迎える。11月なかばの3日間に予定されている全6公演の聴きどころを、フェスの発起人である宮田大(チェロ)と横溝耕一(ヴィオラ)に聞いた。

宮田「日頃のコンサートでも『AGIOに3日連続で行ったんですよ』と声をかけてくださるお客さんが多くなり、アーティストの間でも『AGIO』という名前が浸透してきたように感じています。それもやっぱり続けてきたからこそですね」

 宮田と横溝が同世代のアーティスト仲間に声をかけてはじまった「AGIO」だが、より若い世代の参加も増えてきた。2年ぶりの登場となる郷古廉(ヴァイオリン)は、今年は5公演に出演する。

横溝「年齢的には下でも、僕と宮田さんは同世代だと思ってるので(笑)。郷古さんとはN響で普段から一緒に弾いていて、音楽観も共感できる部分が多いです。あの若さにして音楽に対する哲学を持っている人なので、僕もたくさんの学びや刺激をもらっています」

左より:郷古 廉 ©Hisao Suzuki/小川響子 ©masatoshi yamashiro/松田華音 ©Ayako Yamamoto

 幕開けを飾る「オープニング・コンサート」は、葵トリオでも知られる初登場の小川響子(ヴァイオリン)、松田華音(ピアノ)を含むメンバーによるショスタコーヴィチとプロコフィエフの室内楽。

横溝「ショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲は、美しいメロディの奥に、作曲家が生きた時代を映すような冷徹さや悲痛さを感じさせる作品。今という時代だからこそ、取り組みたい作品でもあります。それを郷古さんや小川さん、そしてロシアで研鑽を積んできた松田さんとともに、想像力を働かせながら作り上げていけたらと思っています」

 続いては「魅惑のチェロ・クァルテット」。チェロ・アンサンブルは、毎年チケットがいちばんに売り切れるという人気のプログラムだ。宮田以外に、辻本玲、清水詩織、清水陽介が出演する。

左より:辻本 玲 ©KING RECORDS/清水詩織/清水陽介 ©T.Tairadate

宮田「昨年は5人のチェロ・アンサンブルでしたが、今年はまた4人に戻って、クァルテットならではの凝縮された世界をお楽しみいただければと。バッハからはじまり、チェロ・クァルテットが聖歌隊のように響くカール・ジェンキンスの『ベネディクトゥス』、4人それぞれのテクニックが光るポッパーの『演奏会用ポロネーズ』、ピアソラでは清水陽介さんのアグレッシブなプレイに期待しています」

 「至極のドビュッシー&フォーレ」では、郷古、横溝、宮田、松田の4人によるフランス音楽を。

横溝「松田さんのピアノのタッチや色彩感は、ロシア音楽だけでなくフランス音楽にも合うのではないかと思っています。フランス音楽はふわっとしたイメージがありますが、じつは細かいところまで楽譜に書かれていて、きちんとソルフェージュしなければならないということを、フランスの指揮者からよく聞きます。それぞれの経験値や感覚をアジャストさせながら取り組んでいきたいですね」

 「ゴルトベルク変奏曲」では、郷古、横溝、宮田による弦楽三重奏(シトコヴェツキー編)でバッハ畢生の名曲に挑む。

横溝「やはり室内楽をやるうえで一度はきちんと向き合うべき作品でありつつ、誰とでもできるものではないので、このメンバーが揃った今がベストなタイミングだろうと思いました。フェスの喧騒を離れて、神聖さを感じる時間になるのではないかと」

上段左より:金子 平 ©熱海洸輔/長 哲也 ©平舘 平/福川伸陽
下段左より:南 紫音 ©Tomoko Hidaki/水野斗希 ©Ayane Shindo/田添菜穂子

 「クロージング・コンサート」では、金子平(クラリネット)、長哲也(ファゴット)、福川伸陽(ホルン)といった管楽器の名手や南紫音(ヴァイオリン)らも入って、シューベルトの八重奏曲でフェスを締めくくる。

横溝「この楽器はこの人をおいてほかに考えられない、という管楽器プレイヤーたちが、快くオファーに応えてくれました。今年から都響に入団して首席を務めるコントラバスの水野斗希さんも、作曲・ピアノ・指揮までこなす素晴らしい若手です。長大なシューベルトの八重奏曲はなかなか演奏機会がないからこそ、その魅力を届けることができたらと思います」

 そのほか、0歳から入れる「ファミリーコンサート」は、ほかでは聴けない豪華メンバーによるプロコフィエフの「ピーターと狼」(ナレーション:田添菜穂子)。大人だけの入場も大歓迎とのことなので、ぜひ!

取材・文:原 典子

(ぶらあぼ2026年10月号より)

Bunkamura Produce × 浜離宮朝日ホール 共同企画
宮田 大 & 横溝耕一が贈る 室内楽フェスティバル AGIO vol.4

2026.11/13(金)〜11/15(日) 浜離宮朝日ホール

オープニング・コンサート 11/13(金)14:00
魅惑のチェロ・クァルテット 11/13(金)19:00
至極のドビュッシー&フォーレ 11/14(土)14:00
ゴルトベルク変奏曲 11/14(土)18:00
ファミリーコンサート 11/15(日)10:30
クロージング・コンサート《オクテット》 11/15(日)15:00

問 Bunkamuraチケットセンター 03-3477-9999
https://www.bunkamura.co.jp
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/


原 典子 Noriko Hara

音楽ジャーナリスト/編集者/ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、フリーランスに。坂本龍一監修の音楽全集『commmons: schola』の編集を担当。2021年にWebメディア『FREUDE』を立ち上げる。アーティスト・インタビューやレビュー記事執筆のほか、公演プログラムや企業オウンドメディアの編集、コンサートの企画運営などを行なっている。鎌倉在住。
https://freudemedia.com