都響・コンサートシーズンの始まりは、大野和士が名手たちの妙技を引き出す傑作2曲プロ!

左より:大野和士 ©Rikimaru Hotta/シモン・トルプチェスキ ©Lube Saveski/篠﨑友美 ©T.Tairadate/伊東 裕 ©T.Tairadate

 都響の秋シーズンの幕開けを告げる定期演奏会では、大野和士が指揮台に上がる。取り上げる曲目は、まず、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。北マケドニアのスコピエ生まれ、この国を代表するピアニスト、シモン・トルプチェスキがソロを弾く。ロシア音楽を得意とするスケール感のあるヴィルトゥオーゾで、大野が王立モネ劇場音楽監督時代にその才質に惚れ込んだというピアニストだ。

 ラフマニノフの4曲のピアノ協奏曲のうち、もっとも独奏ピアノにテクニックを必要とする第3番。安定した技巧、そして広い音域にわたって情感豊かなトルプチェスキのピアノに、大野と都響が作り出す起伏と陰影に富んだニュアンスが加われば、格別のラフマニノフ演奏となるはずだ。

 後半は、リヒャルト・シュトラウスの「ドン・キホーテ」。自分の信念を貫くドン・キホーテの生き様を変奏曲として描いた交響詩だ。チェロとヴィオラの二重協奏曲的な一面をも持った作品ゆえに、外部からソリストを招いて協奏曲のスタイルで演奏されることが多い。

 今回は、ドン・キホーテ役のチェロ独奏に伊東裕、サンチョ・パンサ役のヴィオラ独奏には篠﨑友美、いずれも都響の首席奏者が務める。勝手知ったるオーケストラのメンバーが独奏を担当することで、協奏曲スタイルでは困難な、響きの統一や一体化したアンサンブルが大いに期待できる。10年以上にわたって務めてきた音楽監督を退任、芸術顧問となった大野が都響のポテンシャルを最大限に引き出すことを期待したい。

文:鈴木淳史

(ぶらあぼ2026年9月号より)

大野和士(指揮) 東京都交響楽団
第1050回 定期演奏会 Cシリーズ

2026.9/3(木)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
第1051回 定期演奏会 Bシリーズ
9/4(金)19:00 サントリーホール
問 都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp


鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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