
文:高坂はる香
横浜市招待国際ピアノ演奏会は、「常に新しい文化を取り入れてきた横浜にふさわしく、将来を嘱望される才能を世界から発掘して紹介する」ことを目的に1982年以来開催を重ねてきた。実際、世界のコンクールで注目された若者を、優勝にこだわらずいち早く紹介してきた功績は大きい。のちに重要なコンクールに優勝した人が、実はこの演奏会ですでに来日していたことがあったと知ることもよくある。
第44回も、委員長の海老彰子や、今回から選考に加わった福間洸太朗ら企画委員のお墨付きを得た4名が集結する。

日本から出演するのは注目度急上昇中の中川優芽花。2001年ドイツ生まれ。2021年にクララ・ハスキルコンクールで優勝、2025年のショパンコンクールでの演奏も話題となり、審査員だった海老が「とても繊細な感性の持ち主」と評して実力を認める才能だ。今回は、ショパンのマズルカ、ノクターンとラヴェル「ラ・ヴァルス」で、自由で表情豊かな音楽を存分に聴かせる。

1997年イスラエル生まれのイギリスのピアニスト、アリエル・ラニは、2021年リーズコンクール第3位、2023年にはブッフビンダーから前途有望な若手のためのセルダン賞を贈られている。プログラムは、ハイドン、ショパン、レスピーギというバラエティに富んだもの。福間が「知的で冷静、魅力的な歌いまわし」が魅力と評す表現力を披露してくれる。

ドミトリー・ユージンは2001年モスクワ生まれで、グネーシン音楽学校ののち2019年からアメリカで学ぶ。海老が審査員を務めたボンのベートーヴェンコンクールのファイナルで、入賞せずとも優れた演奏をしていたことから声をかけたそうだ。その後なんと9月に行われたルービンシュタインコンクールで第1位を獲得した。リスト、スクリャービン、武満、セッションズという選曲にも感性が光る。ラニとユージンは2人はいずれも初来日となる。

そしてイギリス、マンチェスターの音楽一家に生まれたカラム・マクラクランは、世界のコンクールに挑む中でファンを増やす気鋭。豊かな音楽性と独自の世界観を持つことが評価され、2度目の来日となる。ラヴェル「鏡」とラフマニノフ「音の絵」という異なるキャラクターの超絶技巧作品で、実力を余すところなく見せてくれるだろう。
例年、出演者同士が組む4手連弾のアンコールがある。同世代の音楽性が刺激を与えあって奏でるここでしか聴けない音楽に出会えるのも楽しみの一つだ。
第44回 横浜市招待国際ピアノ演奏会
2026.11/7(土)15:00 横浜みなとみらいホール
◎アリエル・ラニ(ピアノ)/イギリス
ハイドン:ピアノ・ソナタ第52番 ト長調
ショパン:ノクターン 第20番 嬰ハ短調(遺作)/即興曲 第2番 嬰へ長調 Op.36
レスピーギ:《6つの小品》より〈ノクターン〉/グレゴリオ聖歌による3つの前奏曲 第2番
◎中川 優芽花(ピアノ)/日本
ショパン:4つのマズルカ Op.30/ノクターン 第17番 ロ短調 Op.62-1
ラヴェル:ラ・ヴァルス
◎カラム・マクラクラン(ピアノ)/イギリス
ラヴェル:鏡
ラフマニノフ:エチュード《音の絵》Op.39より 第9番 ニ長調
◎ドミトリー・ユージン(ピアノ)/アメリカ
リスト:巡礼の年 第1年《スイス》より〈泉のほとりで〉〈夕立〉
セッションズ:私の日記から
武満 徹:遮られない休息
スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000
https://yokohama-minatomiraihall.jp
※公演の詳細は上記ウェブサイトをご確認ください。
