ブルネロ、トネッティ、今井信子、葵トリオら名手たちが祝う――日本製鉄紀尾井ホール再開場記念 スペシャル・ガラ・コンサート

 あの親しい響きが帰ってくる。修繕工事のためにおよそ1年半にわたって休館していた日本製鉄紀尾井ホールが2027年1月に再開場。幕開けを告げる「スペシャル・ガラ・コンサート」が、2日間にわたり開催される。

 ホールの響きそのものを味わえる室内楽に特化したプログラム。室内楽の殿堂としての矜持が凝縮された濃厚なガラに、ホールゆかりの名手たちが次々に登場する。

左より:マリオ・ブルネロ ©Gianni Rizzotti/青木尚佳 ©井村重人/今井信子 ©Marco Borggreve

 その筆頭がマリオ・ブルネロ。世界最高峰のチェリストは、1998年の初登場以来、なんとこれが30回目の出演というから驚く。彼の“紀尾井LOVE”は、イタリアのとある森に植樹した木に「KIOI」と名付けたというほど。今回は代名詞であるバッハの無伴奏をはじめ、ソロ、デュオ、トリオ、さらにはトゥッティ(合奏)と大車輪の活躍。記念ガラに“華やかさ”以上の品格と深みをもたらしてくれそうだ。青木尚佳(ヴァイオリン)、今井信子(ヴィオラ)、ブルネロのトリオなんて、ちょっとしびれる。

 両日のトリを飾るヴィヴァルディ「四季」(1/9)と「ブランデンブルク協奏曲第5番」(1/10)をリードするのは、オーストラリア室内管芸術監督のヴァイオリニスト、リチャード・トネッティだ。トレードマークの立奏スタイルで、コンマスの位置から直径2メートルぐらいを動き回って自由にコミュニケーションを取る姿が痛快。体中から放たれるエネルギーとみずみずしい音楽を浴びたい。

左:リチャード・トネッティ ©Stephen Ward
右:伊藤 恵 ©武藤 章

 日本勢も、レジェンドから若手まで多彩な顔ぶれが駆けつける。

 ヴィオラの今井信子は、自ら率いる「ヴィオラスペース」などで、このホールにたびたび豊潤な音楽を響かせてきた。ピアノの伊藤恵も、自身の企画「春をはこぶコンサート」をここで毎年開催し、ホールの歴史を紡いできた特別な一人だ。

 人気シリーズの出演者たちも集結する。若い才能を世に送り出しているのが『紀尾井 明日への扉』。ここが初リサイタルだったという演奏家も多い。川口成彦(フォルテピアノ)をはじめ、大藤莞爾(チェンバロ)、友滝真由(ヴァイオリン)、伊東裕(チェロ)、水野斗希(コントラバス)、山下裕賀(メゾソプラノ)といった現在第一線で活躍する俊英たちが原点に帰ってくる。

左より:大藤莞爾/友滝真由/水野斗希 ©Ayane Shindo/山下裕賀 ©Yoshinobu Fukaya

 一方、ホールの音楽的ブランドを体現しているのが『紀尾井レジデント・シリーズ』だ。ホールの“顔”となるアーティストとともに3年間・3公演の自由なプログラムを構成することで、ホールも共に成長することを目指す。今回は、葵トリオ、川口成彦、青木尚佳と、これまでレジデント・アーティストを務めた3組が勢揃いする。シリーズは今後も、若手に限らない人選で続くというから楽しみ。

左:川口成彦 ©Taira Tairadate
右:葵トリオ ©masatoshi yamashiro

 演奏曲は、単なる祝祭的な名曲集ではない。近年世界中で再評価の波が押し寄せているヴァインベルクのトリオや、弦楽大国ポーランドの女性作曲家バツェヴィチのヴァイオリン四重奏など、いま聴きたい作品もビビッドに組み込まれている。チェンバロからモダンピアノまで、3世代の鍵盤楽器が登場するのも面白い。室内楽のすべてのグラデーションを体感できる3時間30分 × 2DAYSの満腹ガラ。1年半の“紀尾井ロス”が一気に吹き飛びそうだ。

文:宮本 明

(ぶらあぼ2026年10月号より)

日本製鉄紀尾井ホール再開場記念 スペシャル・ガラ・コンサート
2027.1/9(土)、1/10(日)各日14:00 日本製鉄紀尾井ホール
問 紀尾井ウェブチケット webticket@nipponsteel-kioihall.jp
https://nipponsteel-kioihall.jp/reopening/
※公演によりプログラムが異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。