
東京交響楽団の「東京オペラシティシリーズ 第154回」では、大井剛史がチェコの国民楽派の代表作ともいえる2作品に挑む。
日本のオーケストラ界において、手堅い手腕で着実にキャリアを積み上げてきた大井。東響とも共演を重ね、実績を上げている指揮者だ。2018年には、かつて東響が初演した深井史郎や伊福部昭らの作品をまとめて取り上げるというユニークなプログラムを指揮、高い評価を得た。
今回の演奏会の一曲目は、ドヴォルザークの序曲「我が家」。劇の付随音楽として作曲された組曲の序曲で、民謡から取られた2つの主題によるソナタ形式の楽曲だ。それらの親しみやすい主題のひとつは、現在のチェコ国歌の旋律となったという。
そして、スメタナの交響詩「我が祖国」。ボヘミアの自然や伝説、英雄譚を盛り込んだ大作だ。第2曲の「モルダウ」がよく知られているが、動機主題が姿を変化させながら全6曲に現れるなど、その熟達した構成感にも注目したい。
大井は、2007年から2年間、チェコ・フィルで研鑽を積んだ。ドヴォルザークやスメタナを育んだ街のオーケストラで得たものは今回の演奏にも反映されよう。
2つの楽曲の様式を巧みに描き分ける指揮者の腕前。そして、創立80周年を迎えた東響の持ち味である明るく柔らかな音色を生かしつつも、そこにチェコならではのニュアンスも感じさせてくれる演奏を大いに期待できるはずだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2026年10月号より)
大井剛史 (指揮) 東京交響楽団 東京オペラシティシリーズ 第154回
2026.11/1(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
https://tokyosymphony.jp

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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