
『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2026年9月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
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毎年12月7日はミラノ・スカラ座のシーズン開幕日だが、この12月は特に注目度が高い。
それは、このイタリア・オペラの殿堂たる劇場の音楽監督にアジア人初の「快挙」としてチョン・ミョンフンが就任することに尽きよう。ただ「快挙」といっても、チョン・ミョンフンと同劇場との関係は1989年にまで遡ることができ、以来、9つのオペラ作品と140回以上のコンサートを行ってきた絆の深さを考えると、このような選択は当然の人事としてあり得たこととも言える。すでに実績も積んでいるので、ご当地スカラ座での音楽監督として初めての指揮演目であるヴェルディの「オテロ」も、間違いなく大成功を収めるのではないか。
その他のオペラ公演としては、シャンゼリゼ劇場でミンコフスキが指揮するビゼーの「真珠採り」がまずは要注目。このオペラは、5月にウィーン国立歌劇場で都響の首席客演指揮者でもあるルスティオーニが新演出公演を振って話題になったが、「カルメン」に隠れたビゼーの佳品オペラをミンコフスキがどう表現するのかこれまた興味深い。また、12月はクリスマス月間だけあって、ロシア以外では上演頻度の稀なリムスキー=コルサコフの「クリスマス・イヴ」が複数の劇場でかかるのが面白い。
上演されるのは、フランクフルト歌劇場とバイエルン州立歌劇場。どちらも新演出公演ではないが、ロシア系のオペラに関心のある方には見逃せない公演だ。前者は読響常任指揮者のセヴァスティアン・ヴァイグレの信頼も厚いといわれる森内剛の指揮、後者は上演映像がNHKでもすでに放送されたが、コスキーのカラフルな舞台作りが話題となった公演。
さらに年末ならではの話題といえば、ウィーン国立歌劇場大晦日恒例のJ.シュトラウス「こうもり」の指揮者が巨匠ウェルザー=メストであること。昨年のバイエルン州立歌劇場の年末「こうもり」をメータが指揮したのも驚きだったが、今年のウィーンのメストにも意表を突かれた。演出的な話題では、かつて新国立劇場で藤倉大「アルマゲドンの夢」を演出したこともある革新的演出で話題の女性演出家リディア・シュタイアーが、ウィーン国立歌劇場でベルリオーズの「ファウストの劫罰」を手がけるのも要注目。彼女の演出で11月から上演の続くチューリヒ歌劇場でのR.シュトラウス「エレクトラ」も注目公演だ。一つ、オペラ関係を付け加えると、ローマ歌劇場でバーンスタインの幻の劇音楽「ピーター・パン」が上演されるのも大変興味を抱かせられる。
オーケストラ関係では、2026年末をもって指揮活動からの完全引退を表明しているマレク・ヤノフスキ。最後の月である12月には、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管でシューマンの交響曲第3番「ライン」、ベルリン・フィルでブルックナーの交響曲第8番を演奏する。そして、その後に来日してN響で演奏するベートーヴェン「第9」を生涯最後の演奏会に選んだというのは、世界中のクラシック・ファンにも一種の驚きを与えている。才気煥発の若手指揮者マキシム・パスカルはベルリン・フィルでベルリオーズの「キリストの幼時」を演奏する。ベルリン・フィルにとって、ほとんどレパートリーにないと思われるこの曲の演奏は間違いなく「挑戦」であろうが、その指揮者としてパスカルを起用した選択眼には共感できるものがある。その他、大晦日の演奏会としては、ティーレマン=シュターツカペレ・ベルリンの「映画特集」、ソヒエフのニューイヤー・コンサート前の演奏などももちろん注目。なお、現代最高・最先端とも評される弦楽四重奏団のエベーヌ弦楽四重奏団とベルチャ弦楽四重奏団の予定も少し書き込んだ。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)

