Japan National Orchestraが設立5周年、反田恭平が次なるステージのビジョンを語る

 反田恭平率いるJapan National Orchestra(JNO)が設立5周年を迎え、9月17日の東京オペラシティ コンサートホールでの公演を前に記者会見を開催し、音楽監督でJNO代表取締役社長の反田とJNO代表取締役会長の川島昭彦が、これまでの歩みと2030年に向けた長期ビジョンについて語った。

Kyohei Sorita
反田恭平

 JNOは、反田が中心となって2018年に結成したMLMダブル・カルテット、そしてそれを発展させて翌年に誕生したMLMナショナル管弦楽団を前身とする。2018年に、当時DMG森精機株式会社の専務執行役員であった川島とドイツ・ビーレフェルトで出会ったことをきっかけに、2021年に日本初となる株式会社形態のオーケストラ「Japan National Orchestra」として正式発足した。DMG森精機記念財団の支援のもと、同社創業の地である奈良県に本拠地を置いている。「奈良は自然に囲まれていて歴史的な深みがあり、外国からの観光客の皆さんにも喜んでいただける場所。リニア新幹線のアクセス構想も含め、活動の拠点として非常に魅力的だった」と反田は振り返る。

Kyohei Sorita

 国内ツアーはこれまでに90公演、2022、23年にはドイツ、イタリア・ツアーも実現させた。そのほか、メンバーによるリサイタルや室内楽シリーズも約90公演にのぼる。学校や街角に出向いてのアウトリーチ活動にも力を入れ、“音楽の街、奈良”を目指して地域の活性化にも注力してきた。この5年で「メンバー個々が他のオーケストラやソロで活躍し、お互いに刺激し合ってすごく成長した。個人としても成長したからこそ、お客様に本当に良いものを届けられる」と反田は実感をこめた。実際、JNOのほかにドイツ・カンマーフィル、東京フィル(首席客演)でもコンサートマスターを務める岡本誠司、プラハの春国際音楽コンクール チェロ部門で優勝した水野優也など、メンバーの国内外での活躍には目覚ましいものがある。

 近年は完売公演も多く、株式会社としても3年連続の黒字を達成するなど、経営も順調に推移しているという。BMW、SMBCなどスポンサー企業を着実に増やしてきたことも背景にあるが、事業安定化の理由として川島会長は「団員の副業推進」を挙げ、他団体での活動やソロ演奏を支援する柔軟な雇用形態をとっていると述べた。

川島昭彦
川島昭彦

 続いて反田から将来に向けた成長戦略の「5つの柱」が示された。
1.教育・アカデミー設立を目標としたアウトリーチ活動の積極化
2.配信・音源制作 CD制作、ラジオ・映像配信
3.海外展開 海外指揮者・アーティスト招聘
4.奈良県文化会館 新たな活動拠点
5.音楽祭 2028〜2029年始動を目指す

 ジュニア世代に向けた教育、高音質配信などのデジタル・コミュニティ強化も見据えるが、注目は客演陣の招聘だ。「僕以外の指揮者やソリストの方も積極的に招いて公演の幅を広げたい。ヨーロッパやアメリカでも通用するその先を目指して挑戦していく」(反田)とのこと。現在、改修工事が行われている奈良県文化会館が2028年にリニューアルオープンを予定していることもあり、同ホールを拠点に音楽祭など新たな事業がどのように展開されていくのかも注目される。

Kyohei Sorita

 JNO設立時から、2030年に音楽の学び舎としてのアカデミーを創設することを最大の目標に掲げてきた反田。既存の音楽大学との違いや創設の狙いを問われると、自身の指導経験にも触れつつ「少子化の影響もあり音大の状況も変化している。既存の枠組みにとらわれず、日本の若い音楽家が世界へ羽ばたくための架け橋となる実践的な学びの場を作りたい」と回答した。オーケストラを軸に、音楽祭、教育、そして地域の文化拠点へ。株式会社という独自の運営形態からスタートしたJNOが、この先どのような教育・文化基盤を奈良に築いていくのか。設立5周年は、ネクストステージへ向けた節目となりそうだ。

取材・文&写真:編集部

Japan National Orchestra
https://www.jno.co.jp