
メゾソプラノの女王、エリーナ・ガランチャ。たぐいまれな美声、卓越した音楽性、そして魅力的な舞台姿で、長年にわたり世界の第一線に君臨し続ける存在だ。近年も、ウィーン国立歌劇場《カヴァレリア・ルスティカーナ》のサントゥッツァ、メトロポリタン歌劇場《アイーダ》アムネリス、バイロイト音楽祭《パルジファル》クンドリー、チューリヒ歌劇場《カルメン》題名役などに出演し、ますます高い評価を獲得している。
昨年6月の来日では、サントリーホールほか各地でリサイタルを開催し、聴衆を感動の渦に巻き込んだ。ガランチャがステージに登場すると、その凛とした佇まいにまず心を奪われる。しかし真に驚かされるのは、彼女が歌い始める瞬間だ。ふと気づくと、すでに歌が始まっている——そんな自然さで喉から発される声は、静かに、しかし確実にホール全体へと浸透していく。演奏が進むにつれ、その声はいっそう輝きを増し、やがてオーケストラを楽々と越えて空間を満たしてしまう。
そんなガランチャが、11月、再び来日する。ビゼー《カルメン》からの曲に加えて、グノー、チャイコフスキーなど得意の曲が予定されているという。共演は夫でもあるカレル・マーク・チチョンが指揮する新日本フィルハーモニー交響楽団。チチョンは誰より彼女を理解する指揮者として、その歌と音楽全体を豊かに支えるだろう。ガランチャの声をホールで聴く。そこには、えも言われぬ至福がある。
文:井内美香
(ぶらあぼ2026年7月号より)
エリーナ・ガランチャ メゾソプラノ リサイタル 2026
2026.11/1(日)13:00 すみだトリフォニーホール
11/3(火・祝)13:00 サントリーホール
問:テイト・チケットセンター03-6774-1968
https://www.tate.jp

井内美香 Mika Inouchi
オペラをこよなく愛する音楽ジャーナリスト。20年間イタリア・ミラノに暮らした後、東京を拠点に活動。イタリア語の通訳・翻訳も手がける。イタリア・オペラやイタリアの歌劇場に精通する一方、オペラ、声楽全般に幅広い関心を持つ。スペインの老舗オペラ・マガジン『Ópera Actual』の東京特派員として、新国立劇場を中心とする日本のオペラ公演のレビューを執筆している。
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