9/94。94はヴィヴァルディの書簡による、生涯に書いたオペラの数。9は本盤の指揮者サルデッリによれば完全な形で残されたオペラの残存数だ。1716年に初演され成功した《愛と憎しみに勝つ貞節》も失われた。だがサルデッリは各地に散在するアリアの写本や他作への転用曲を丁寧に拾い、全体の半分ほどを補筆なしで復元。レチタティーヴォもなくシンフォニアは所属オペラ不明曲を使用。だが感情表現の幅の広いアリアはまぎれもなくヴィヴァルディの音楽。聴いたことのある旋律も出てくる。語法を知り尽くした歌手も器楽も充実、幻のオペラが蘇る! 映画『ヴィヴァルディと私』を傍らに聴きたい。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2026年7月号より)

【information】
CD『ヴィヴァルディ:歌劇《愛と憎しみに勝つ貞節》/フェ
デリコ・マリア・サルデッリ&モード・アンティクォ』
ヴィヴァルディ:シンフォニア RV112、歌劇《愛と憎しみに勝つ貞節》RV706-A
フェデリコ・マリア・サルデッリ(指揮)
モード・アンティクォ
ヴァレーリア・ラ・グロッタ(ソプラノ)
チェチーリア・モリナーリ(メゾソプラノ)
ヴァレンティーノ・ブッツァ(テノール)
ビアージョ・ピッツーティ(バス)
Passacaille/東京エムプラス
TPAS1175 ¥4000(税込)

矢澤孝樹 Takaki Yazawa
1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。
