長期休館中はホールを飛び出し、滋賀県内外で自主事業を継続
1月23日、滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホールが令和8年度(2026年4月〜27年3月)の自主事業ラインナップを発表。ホール内で記者発表が行われ、芸術監督の阪哲朗、館長の村田和彦らが登壇した。

今年の7月から28年2月末まで、大規模改修工事に伴う全館休館に入るびわ湖ホール。自主事業に関しては6月下旬まで同ホールで行った後、休館期間中は滋賀県内外のホールを巡ることになるが、26年度も170公演と今年度(181公演)に引けを取らない数の公演が予定されている。総括プロデューサーの村島美也子は、「建物という形を離れてなお地域の方々とより深くつながるとともに、新たな関係も構築していくための大切な時期と考えています」と、改修期間でのさらなる飛躍に向けた意気込みを示した。

23年4月、3代目芸術監督に就任して以来、多くの自主事業で精力的に腕を振るってきた阪。今年度末での満了が予定されていた任期が更新され、29年3月末まで引き続きその任にあたることが発表された。
阪「休館に関してはピンチではなく、いいチャンスだと考えています。機動力を生かしてあちこちに出向いていって、われわれの”顔”を知っていただいた上で、びわ湖ホールで再会する。そういったストーリーを作っていきたいと考えています」

びわ湖ホールが総力を結集して制作する「プロデュースオペラ」は、26年度に開館40周年を迎える同県の守山市民ホールで上演される(27.1/23,1/24)。演目はモーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》(演出:中村敬一)で、大西宇宙をはじめとする国内指折りのソリストが集結、阪のフォルテピアノによる弾き振りにも注目したい。なお、開館以来恒例となっているジルヴェスター・コンサートも、守山市民ホールに会場を移して継続される(26.12/31)。
オペラ公演のもう一つの大きな柱で、入門編となるシリーズ「オペラへの招待」は2演目。開館初期からのレパートリーとして受け継がれている林光《森は生きている》(室内オーケストラ版)は阪のタクトのもと、休館前に中ホールで上演されたのち(5/9,5/10)、夏には新国立劇場で東京の聴衆にもお披露目される(7/18,7/19)。そして、翌年3月にはイタリア映画音楽の巨匠、ニーノ・ロータの《フィレンツェの麦わら帽子》というレアな演目が園田隆一郎の指揮で取り上げられる(27.3/6,3/7・栗東芸術文化会館さきら)。
こうしたオペラ公演の核を担うのが専属の「びわ湖ホール声楽アンサンブル」だ。学校巡回公演など多くの事業で大車輪の活躍を見せている同アンサンブルだが、26年度は計4回の定期公演を行う。6月、休館前最後の自主事業となる公演では、桂冠指揮者の本山秀毅とともに滋賀ゆかりの歌を取り上げ、ホールにしばしの別れを告げる。その後は県内の高島市・ガリバーホール(9/12)、草津クレアホール(27.3/27)、さらには京都府立府民ホール「アルティ」(26.12/19)へと舞台を移して活動を続ける。
阪のシーズン初仕事、そして休館前の一大イベントとなるのが、「びわ湖の春 音楽祭」(4/25,4/26)。テーマは「誘い(いざない)」で、先述の《ドン・ジョヴァンニ》から連想したという。
阪「男女問わず惹きつけるドン・ジョヴァンニ、天真爛漫な性格とともにデモーニッシュな部分も併せ持つモーツァルトの音楽、そしてとにかく『お誘いあわせのうえお越しください!』というメッセージをこのテーマに込めました」
本音楽祭では京都市交響楽団が大ホールの3公演に出演。オープニング・コンサートでは阪が共演を熱望したウィーンの名ピアニスト ヤスミンカ・スタンチュールがソリストとして迎えられる。そして、常任指揮者 沖澤のどかが登場するのも大きな呼びものとなるだろう。ファイナル・コンサートでは、石橋栄実(ソプラノ)、甲斐栄次郎(バリトン)らとともに《フィガロの結婚》ハイライトを演奏会形式で上演する。堀米ゆず子(ヴァイオリン)、児玉隼人(トランペット)ら多彩な顔ぶれのアーティストも集い、出会いと別れの季節の琵琶湖を彩る。

「びわ湖ホールを中心に、朗らかな春の調べが広がる琵琶湖をイメージ」して描かれたという。
「誘い(いざない)」は音楽祭だけでなく、ホールの年度全体を通底する主題となるという。長期休館という転換点をバネに活動の場を広げるびわ湖ホールが、各地の公演を通してどのような音楽体験へと誘ってくれるのか、心待ちにしたい。
文:編集部
写真提供:びわ湖ホール
