
佐竹康峰(株式会社SKI代表取締役)、西野裕之(しらかわホール支配人)
2月12日、しらかわホール(名古屋市中区)で記者会見が行われ、3月の再開館に向けた概要が発表された。再開館記念公演にはアンドラーシュ・シフ、ルドルフ・ブッフビンダーら世界的アーティストが名を連ねる。
1994年に誕生したしらかわホールは、中部地方を代表するクラシック音楽専用ホールとして、国内外の一流アーティストから地元の演奏家まで、多くの音楽ファンに愛されてきた。しかし、同ホールの経営状況や高額な維持修繕費用などを背景に、2024年2月、惜しまれつつも閉館した。
その後、複数の個人や企業が出資する新会社(株式会社SKI)が設立され、運営を担うことがすでに発表されていた。
2026年度上半期は「再開館記念公演」と銘打ち、豪華ラインナップが並ぶ。
初日となる3月24日は、アンドラーシュ・シフのピアノ・リサイタルで幕を開ける。閉館前、貸館が主体だったこのホールが最後に主催した公演(2014年)を飾ったのもシフだった。プログラムはトークとともに当日発表されるスタイルで、親密な空間でのステージが楽しみだ。
4月はルドルフ・ブッフビンダーによるベートーヴェン ピアノ・ソナタ名曲選(4/9,4/11,4/12)。今年80歳を迎える円熟の巨匠が、幾度となく取り組んできたこの作品群から11曲を厳選し、3日間にわたり披露する。
しらかわホールを長年本拠地としてきた愛知室内オーケストラは、首席客演指揮者兼アーティスティック・パートナーの原田慶太楼とともに登場(4/4)。ショパンコンクールで第4位に入賞した桑原志織が、本選でも披露したショパンの協奏曲第1番でソリストを務める。
さらには、鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパンによるブランデンブルク協奏曲全曲演奏会(5/22)、ピエタリ・インキネンが指揮を務め、欧州の名門歌劇場で活躍するソプラノ マンディ・フレードリヒが登場する紀尾井ホール室内管弦楽団の公演(8/2)も予定されている。
貸しホールとしてはすでに2026年12月までに、仮予約を含め約100件近い申し込みがあるという。再開館に向けた設備改修では、鑑賞環境の向上も進められる。療養中の人や子ども連れなど、周囲への気兼ねからこれまで来場を控えていた人も安心して楽しめるよう、2階サイドバルコニー席の一部をボックス席に改修する。
新たに設けられるこの「ファンボックス」は、2階に8室(各6名定員)、1階後部に特別室1室の計9室。うち5室(特別室を含む)は全面ガラス張りの防音仕様で、高音質スピーカーとモニター映像を通じて鑑賞できるという。
これにより、総座席数は696席から631席へ減少するものの、残響時間は改修前の1.8〜2.0秒から2.0〜2.3秒へとやや増加する見込みで、より奥行きのある響きが期待されている。
会見では、再生事業の一環としてクラウドファンディングを実施することも発表された。期間は2月16日から4月17日までの2ヵ月間。目標金額は1,000万円。集まった資金は、目標の達成に関わらず、ホールの改修をはじめとする再開館に向けた整備に充てられる。
名古屋の音楽文化を牽引してきたしらかわホールは、この春、新たな歴史の第一歩を踏み出す。
文:編集部

