3月4日、東京文化会館の2026年度主催事業ラインナップに関する記者発表会が行われ、作曲家・ピアニストで同館音楽監督を務める野平一郎らが登壇した。
1961年の開館以来、日本のクラシック音楽シーンの中心地のひとつであり続ける東京文化会館。オープンから65年が経過し、設備など施設全体の経年劣化が進んできていることから、今年の5月より約3年間にわたり大規模改修に伴う長期休館に入る。一方で、東京を代表する“音楽の殿堂”としてその歩みを止めることはなく、都内の各ホールに会場を移して主催事業を継続する。野平は「東京文化会館が開館当時から築いてきて、多くの演奏家に愛していただいたこのホールの響きは変わりません。3年後の再オープン時も、きっとスムーズにお客様に楽しんでいただけるのではないかと考えています」とコメントした。

3年目に突入! “現代×古典”のエキサイティングな音楽祭
その野平がプロデュースする「フェスティヴァル・ランタンポレル」は、2027年2月24日から3月1日に浜離宮朝日ホールで行われる。“現代と古典の音楽がクロスオーバーする”をコンセプトに、フランスのレ・ヴォルク音楽祭やIRCAM(フランス国立音響音楽研究所)と連携する同音楽祭。第3回となる26年度のプログラムでまず注目したいのが、テーマ作曲家の一人、オンドレイ・アダメクだ。1979年チェコ生まれ、ヨーロッパで目覚ましい活躍を重ねる彼の作品は、イザベル・ファウストやジャン=ギアン・ケラスら名だたるアーティストが初演している。今回の「ランタンポレル」ではその楽曲が同郷のドヴォルザークとのカップリングで演奏されるだけでなく、作曲家自身によるマスタークラスやトークセッションが開催。能をはじめとする日本文化に影響を受けた作品も多いというアダメクが何を語るのか、興味を惹かれる。
東京文化会館肝煎りの事業、「音楽クリエイター育成プロジェクト Tokyo&Paris to the NEXT」の成果発表の場が設けられる点も見逃せない。3人の邦人若手作曲家らを数ヵ月に一度のペースでIRCAMに派遣し、エレクトロニクスを使用した作品を委嘱するプロジェクトで、その初陣として本年度より創作活動をスタートさせた向井響の新作が「ランタンポレル」で演奏される。また、同音楽祭の名物企画となりつつある、現代音楽と無声映画がコラボする「IRCAMシネマ」も継続。もう一組のテーマ作曲家、レベッカ・サンダース&ラヴェルにフォーカスしたコンサートも含め、知的好奇心をそそられる陣容だ。
おなじみの舞台公演も、コンクールも継続
これまで大小二つのホールで、数多くの創造的な舞台作品の初演を行ってきた東京文化会館。2026年度はその成果を都内各地に届けるシーズンとなる。青少年向けの作品を上演する「シアター・デビュー・プログラム」では、小学生向けの『シミグダリ氏~鉄靴の姫と麦粉の王子~』(新垣隆 作編曲/23年初演)を8月に渋谷区民文化総合センター大和田 さくらホールで、中学・高校生向けの『ラヴェル最期の日々』(加藤昌則 作編曲/24年2月初演)を6月に新国立劇場 中劇場にて再演。さらに、なじみのない人でも楽しめるオペラを届けるとともに、ワークショップで子どもの芸術体験の場も創出しているプログラム「チームアップ!オペラ」は、コロナ禍の20年に初演されたメノッティ《アマールと夜の訪問者》が、9月に狛江エコルマホール、10月にたましんRISURUホール(立川市市民会館) 大ホールにて上演される。
24回目の開催となる「東京音楽コンクール」は、ピアノ・弦楽・金管3部門での開催。同会館の小ホールで第1次予選を行った後、第2次予選はすみだトリフォニーホール 小ホール、本選は東京芸術劇場 コンサートホールへと会場を移す。本コンクールを巣立った奏者は国内外問わず活躍の場を広げていて、近年は審査員として帰還するケースも多いが、同年度も青木篤子(ヴィオラ/第2回第1位)、上村文乃(チェロ/第5回第2位)、瀧本麻衣子(ヴィオラ/第10回第3位)らが弦楽部門審査員を務める。なお、入賞者によるコンサート「上野 de クラシック」は、休館後も同じ上野公園内の旧東京音楽学校奏楽堂で開催を継続。
あらゆる人が安心して音楽を楽しめるコンサート「リラックス・パフォーマンス」をはじめ、未就学児、高齢者、障がい者向けの公演やワークショップも各地で展開する東京文化会館。休館中も、“音楽の殿堂”として変わらぬ存在感を発揮し続けそうだ。

文・写真:編集部
東京文化会館
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