ペヤチェヴィッチの協奏曲を日本初演!
クロアチア国立ザグレブ大学音楽アカデミーを卒業して数々の国際的なピアノ・コンクールで入賞。現在「日本クロアチア音楽協会」の代表も務め、同国の作曲家による作品の普及活動にも熱心な安達朋博。今年の9月には生誕130年を迎える女性作曲家ドラ・ペヤチェヴィッチゆかりの地で開催されるバースデー記念公演にも参加予定だ。
「現地でも30年振りの再演となる唯一のコンチェルト作品、『ピアノ協奏曲 ト短調』のソリストを務めます。彼女の実家である伯爵邸をバックにステージを組んだ壮大な野外コンサートになる模様で、今から凄く楽しみです」
帰国後の9月28日、5回目となる杉並公会堂でのリサイタルでもペヤチェヴィッチ作品を演奏する。ピアノ協奏曲は今回が日本初演ということもあり、大いに注目だ。共演は井上喜惟(ひさよし)指揮のジャパン・シンフォニア。
「貴族階級だった彼女はサロンなどで自作を披露する機会に恵まれ、37歳と6ヵ月という短い生涯に後期ロマン派様式で58作品を遺しています。ピアノ協奏曲は20代後半に書かれたショパンやブラームスを彷彿とさせる名曲で、ピアノがとても華やかで技術的にも難しいのが特徴。でも昨年の公演を終えた時から、次回はぜひ! と決めていました」
映画音楽のようにムーディーな、「ピアノと管弦楽のための協奏的幻想曲 ニ短調」も聴き所のひとつ。
「第2楽章にチェロのソロが入っているのも印象的。全体で16分ぐらいの作品ですが最後に4分間もの長大なカデンツァがあってかなり技巧的で華やかな雰囲気に溢れています」
プログラムの幕開けに演奏されるのは、「管弦楽のための序曲 ニ短調」。
「文学にも造詣が深く、作家のカール・クラウスや詩人のリルケとも交流があったという彼女。協奏的幻想曲の前には交響曲を完成させ、オーケストラ伴奏による歌曲も書き上げていたことから考えると、オペラ作品を予感させるような素晴らしい序曲です。もともとピアノの小品よりは室内楽の完成度が高い人で、当時の社会で女だてらに作曲家として認められたいという野心もあったでしょうし、彼女が本当に書きたかったのはオペラのような大編成の作品だったと思われます。今回のリサイタルでは、そんなペヤチェヴィッチ芸術の方向性を知ってもらうことで、多くの人がもっと彼女の作品に興味を持っていただけたら嬉しい」
後半には同じオーストリア=ハンガリー帝国出身繋がりで、今年没後70年を迎えるバルトークのピアノ協奏曲第3番の演奏もある。アンコールには素敵なサプライズ曲も用意されているとのことで、そちらにも期待したい。
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から)
9/28(月)19:00 杉並公会堂
問:ART∞LINKS 050-3681-1068
http://www.artlinx.jp