赤ちゃんから大人まで誰でもWelcome！ 「サラダ音楽祭2025」メインプログラムの観どころ＆聴きどころ

家族そろって“歌って、聴いて、踊って”楽しむ2日間

　東京都交響楽団が東京都や東京芸術劇場などと連携して行う「サラダ音楽祭」。池袋エリアをメイン会場として、誰もが音楽の楽しさを体感・表現できる音楽祭である。「サラダ」という名称は「Sing and Listen and Dance～歌う！聴く！踊る！＝SaLaD」に由来。赤ちゃんから大人まで楽しめる多彩なプログラムが満載だ。

　核となる「メインコンサート」は、都響音楽監督・大野和士の指揮のもと、サラダ音楽祭のコンセプトを活かした「オーケストラ×歌×ダンス」で魅せるコンサートである。プログラムの前半を飾るのはモーツァルトの楽曲。歌劇《魔笛》序曲と共に「戴冠式ミサ」で華麗に幕を開ける。ミサ曲にはソプラノの砂田愛梨、メゾソプラノの松浦麗、テノールの寺田宗永、そしてバスの狩野賢一といま注目の歌手たちが勢ぞろい。迫力ある合唱はもちろんだが、ソリストたちの見せ場も多く、楽器としての「声」の力強さ、輝きを存分に味わうことができるだろう。

　ペルトの「フラトレス～弦楽と打楽器のための」、そしてラヴェルの「ボレロ」では演出家・振付家の金森穣が率いる日本を代表するダンスカンパニー「Noism Company Niigata（ノイズム・カンパニー・ニイガタ）」による舞踊と大野率いる都響の特別な共演も楽しむことができる。「ボレロ」は昨年も大好評だった演目で、各楽器の音色、大迫力のクライマックスに向かって突き進む音楽とともに、躍動感あふれる身体表現が絡み合うさまは多くの聴衆を熱狂させてくれそうだ。

ワクワクが止まらない！ 充実の子ども向けコンサート

　おなじく毎年大好評、赤ちゃんが泣いても声を出しても安心な「OK！オーケストラ」も開催。近藤良平率いる人気ダンスカンパニー「コンドルズ」とオーケストラのコラボレーションで楽しい親子の時間を過ごすことができるだろう。“指揮体験コーナー”や“みんなで一緒に歌おう！”といった身体を動かす時間も設けられており、コンサートの空間に慣れていない子どもでも安心して楽しむことができる工夫が凝らされている。楽曲も「ラデツキー行進曲」に「ワルツィング・キャット」、『くるみ割り人形』などが並び、音楽からさまざまな色彩、リズムが味わえるようになっている。コンサート・デビューに最適なプログラムであると同時に、たくさんの“体験”が待っていることだろう。

　演奏会に少し慣れたお子さまにはぜひ「子どものためのオペラ」をおすすめしたい。毎年凝った演出と楽しい物語、魅力的な歌唱によって大人気となっているシリーズだ。今年はノルウェーの童話が原作の『しろくまの王さま ヴァレモンの物語』を日本初演。勇敢な娘ラグナが、愛するしろくまの王さまであるヴァレモンにかかった呪いを解くために、冒険に出るという物語。絵本を読み進めているかのようにストーリーが展開し、子どもはつねにワクワクドキドキ、大人も思わず引き込まれてしまう仕掛けが盛りだくさん。主人公ラグナを演じるソプラノの種谷典子はいま勢いのある歌手のひとりで、美しく艶やかな声と魅惑的な歌唱はもちろんだが、コロコロと表情を変えて聴衆を魅了する演技も注目だ。

　「Noism」の若手メンバーで構成された「Noism2」の迫力あるダンスによって物語が紡がれていく「親子で楽しむダンス」も注目したい公演のひとつ。今年はバレエ音楽『火の鳥』を上演し、人間離れした身体表現で魅せる。こちらも0歳から入場可能なので、親子でも安心して楽しめる。上演後にはワークショップも行われるので、ダンサーたちから実際に華麗なダンスのヒミツを教えてもらおう。

もっと音楽が好きになる！ マスタークラスやワークショップも

　上記以外にも、歌やダンスなどのワークショップや街中で気軽に楽しめるミニコンサートなど、多種多様な企画が用意されている。たとえば「都響といっしょに『だれでもピアノ®』」は会場のピアノを弾くと、近くに設置されたモニターの中のバーチャル都響カルテットが共演してくれるというアトラクション。曲は指一本で弾けるものから両手による本格的なものまで用意されており、だれでも楽しむことが可能だ。

　また都響メンバーの直接指導を受け、共演する機会も設けられている（参加受付は終了）。まずは「Let’s 弦楽アンサンブル」。都響弦楽メンバーのもと3日間にわたり練習を行い、メインプログラム初日の発表コンサートでその成果を披露する。一方管打楽器を含むオーケストラの楽器を対象とした「サラダ音楽祭マスタークラス」では、音楽祭期間中にマスタークラスが開催（無料で聴講可能）。その後もさらにリハーサルを重ね、9月23日と12月13日、計2回の公演に臨む。どちらの成果発表も丁寧に紡ぎあげられてきたアンサンブルが会場を包み込むことだろう。ぜひ耳を傾けてほしい。

　そしてワークショップは上手に歌うためのテクニックを学んだり、ダンスのレッスンを受けたり、楽器作りをしたり…と各分野で活躍するアーティストからレクチャーをしてもらえる。たくさんの可能性をもった子どもたちが自分の新しい一面に気が付く、貴重な時間となっている。

　毎年心を揺さぶる演奏やダンスを楽しめるだけでなく、自らが主体的に動き、発見や喜びにも出会うことができる「サラダ音楽祭」。ぜひ感動と喜びにあふれた時間を体験しに出かけてみてほしい。

文：長井進之介

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