成田寛、白井圭ら7人の豊穣の弦が映し出す、ロマン派の成熟とその行方

左:成田 寛
右:白井 圭 ©kazumichi kidera(FU.)

 12月の頭、「浪漫派の変容〜ブラームスからリヒャルト・シュトラウスへ」と題された室内楽公演が開催される。ブラームスの弦楽五重奏曲第2番、R.シュトラウスの歌劇《カプリッチョ》より前奏曲(弦楽六重奏)と弦楽七重奏版「メタモルフォーゼン」。渋くも美しい、両作曲家晩年期の名作群だ。出演は白井圭/岡本誠司(ヴァイオリン)、成田寛/小峰航一(ヴィオラ)、山崎伸子/矢口里菜子(チェロ)、石川滋(コントラバス)。中心的存在の白井と成田に話をきいたところ、「実は成田さんのやりたいことをやろう、という会でもあるんです」と白井は笑う。

成田「僕が今年60歳になって、オケプレイヤーとしても40年目ですが、山響トップで同僚の矢口さんが“何か演奏会を!”と言い始めて(笑)、すばらしいHakuju Hallにもつないでくれました」

 共演者は、両者が「様々な形でお世話になり続けた先生です!」と尊敬する山崎伸子をはじめ、成田と関わりの深い様々な世代のトップ奏者が集う。白井は気心知れた奏者との共演の楽しさを強調する。

白井「成田さんと岡本君とは調布国際音楽祭で室内楽を続けていますが、そこでの音楽作りがすごく楽しい。“アンサンブルはこうあるべき”ではなく、目の前の作品に対して4人が持っているものを落とし込むことで、自ずと出てくるものが面白い。枠にはまらず、息がしやすいんですね。今回の7人でも、みんなで呼吸をシェアできる音楽作りを目指します」

 成田が中心に選んだプログラムは、両作曲家のつながりに思いを馳せるもの。両者とも大きなやりがいを感じている。

成田「ブラームスの、“後年は作曲意欲が衰えた”というイメージは少し違うと感じています。この五重奏曲は若々しい意欲にあふれています。シュトラウスは若い頃は古典的な音楽に傾倒していて、ブラームスの交響曲第4番の初演にも関わりがあり、意外と精神的に近いかもしれません。また、《カプリッチョ》はオペラのテーマが『音楽が先か、言葉が先か』で、ブラームスも同様なことに逡巡があったようです。『メタモルフォーゼン』は、シュトラウスの最初の構想は(23の弦楽器編成ではなく)七重奏で、今回演奏するのは1990年に発見されたスケッチをもとに再編纂されたものです。母国が爆撃された衝撃から書かれた作品で、『戦争とは』という現代につながる問いかけも感じられます」

白井「そういった歴史の流れというものが、普段以上に感じられる演奏になると思います。この3曲でのコンセプトやメッセージもあり、それを自分たちで紐解いていきたいし、その成果を楽しんでいただけたらと思います」

取材・文:林 昌英

(ぶらあぼ2026年11月号より)

弦楽七重奏による「メタモルフォーゼン」
浪漫派の変容~ブラームスからリヒャルト・シュトラウスへ
2026.12/1(火)19:00 Hakuju Hall
問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://hakujuhall.jp


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。