鈴木秀美 指揮 東京シティ・フィル
シューマンの協奏曲に盟友・山崎伸子を迎えて

左:鈴木秀美 ©K.Miura
右:山崎伸子 ©武藤 章

 鈴木秀美は、近年、主宰するオーケストラ・リベラ・クラシカだけでなく、神戸市室内管弦楽団の音楽監督を務めるなど、指揮者としての活動を積極的に行っている。10月には東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団に客演し、シューマン&ベートーヴェン・プログラムを振る。メインは鈴木が愛するベートーヴェンの交響曲第6番「田園」。2023年10月の新日本フィルの定期で披露した、古楽的なアプローチを採り入れ(ナチュラル・ホルンを使用し、弦楽器はヴィブラートが抑えられていた)、細やかに描写された、起伏の大きな演奏が記憶に新しい。鈴木のピリオド的なアプローチが東京シティ・フィルとどのような化学反応を起こすかが注目である。

 前半には、シューマンのチェロ協奏曲が取り上げられる。いうまでもなく、鈴木秀美はチェロの名手でもあり、バロック・チェロ奏者として世界的な名声を博している。今回は自ら独奏を務めるのではなく、ソリスト・山崎伸子を支える。鈴木と山崎は同世代(1歳違い)で、ともに桐朋学園の高校と大学で学んでいる。山崎が1975年の日本音楽コンクールで優勝し、鈴木も79年に第1位を獲得している。その後の二人は、それぞれの道を歩んだが、その基礎にあるものは共通しているに違いない。興味津々の共演である。演奏会の最初にはシューマンの「マンフレッド」序曲が演奏される。鈴木が近年、熱心に取り組んでいる初期ロマン派の管弦楽曲が楽しみだ。

文:山田治生

(ぶらあぼ2025年8月号より)

鈴木秀美(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第382回 定期演奏会 
2025.10/18(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp


山田治生 Haruo Yamada

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。1987年慶應義塾大学経済学部卒業。雑誌や演奏会のプログラム冊子に寄稿。著書に「トスカニーニ」、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 」、編著書に「戦後のオペラ」、「バロック・オペラ」、「オペラガイド」、訳書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」などがある。