円熟した音楽の彫琢を、示唆に富んだプログラムで味わう

1970年ドイツ生まれの彼は、90年にリーズ国際コンクールで第2位を獲得後、ラトル、ヤンソンス、アバドや、ウィーン・フィル、コンセルトヘボウ管、パリ管などと共演。特にベルリン・フィルとは、2003/04シーズンに同楽団史上初の“ピアニスト・イン・レジデンス”を務めて以来、親密な関係を築いている。さらに1998年からシュパヌンゲン音楽祭を主宰し、来シーズンからノーザン・シンフォニアの音楽監督に就任するなど、活動範囲は幅広い。
演目は、シューベルト「ソナタ第19番」、シェーンベルク「6つのピアノ小品」、ベートーヴェン「ソナタ第32番」。ウィーンの大家が最晩年に残した2つの“ハ短調”ソナタに、同じウィーンで調性を忌避した作曲家の極小作品を挟んだ、きわめて興味深いプログラムが組まれている。この内容は、深い解釈と多様な表現力をもって真摯に楽曲に挑む彼に相応しく、またそれを800席の紀尾井ホールで聴けるのも嬉しい。40代半ばの脂の乗った実力者のピアノを、この機会にじっくりと味わいたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年6月号から)
6/29(月)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp