フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) 読売日本交響楽団

フランソワ=グザヴィエ・ロト ©Marco Borggreve
フランソワ=グザヴィエ・ロト ©Marco Borggreve
 最注目の指揮者の登場だ。7月の読響定期で、フランソワ=グザヴィエ・ロトが同楽団を初めて指揮する。
 彼は今ヨーロッパで熱視線を浴びる、1971年パリ生まれの鬼才。自身が創設した「レ・シエクル」における近現代曲のピリオド楽器演奏、中でもレコード・アカデミー賞大賞に輝いた「春の祭典」のCDで、大ブレイクを果たした。同時に、2011年から南西ドイツ放送響の首席指揮者を務め、15年9月からケルン市の音楽監督に就任。ベルリン・フィル、コンセルトヘボウ管、アンサンブル・アンテルコンタンポランなど、モダン・オーケストラでの実績も光る。
 その独自の解釈と洗練された音楽は、南西ドイツ放送響の来日公演やN響「第九」でも衝撃を与えたが、元来のゴージャスな響きにカンブルランが精緻な彫琢を付与した今の読響は、ロトの持ち味発揮に相応しく、共演への期待は限りなく大きい。
 “清澄な神秘性”に貫かれたプログラムも興味を倍加させる。まずブーレーズの「ノタシオン」(第1・7・4・3・2番)は、次のベルクに似た音響的妙味充分の作品。ロトの鋭敏な感覚が示される。ベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」は、早世した女性のためのレクイエム。ロトの音作りと共に、今年22歳ながら深い内面性と表現意欲をもつ郷古廉のソロが聴きものだ。
 後半のハイドン「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」(管弦楽版)は、信者の瞑想用に書かれた、遅い楽章が連続する作品だが、音楽は情感豊かでドラマティック。ここはロトの生み出すテンションと音の綾が耳を奪うに違いない。ともかくロトの演奏は発見の連続。足を運ぶ甲斐は必ずある。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年6月号から)

第550回 定期演奏会
7/1(水)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-000-4390 
http://yomikyo.or.jp