ミヒャエル・ザンデルリンク(指揮) ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団

伝統を尊重しつつ未来を見据える

ミヒャエル・ザンデルリンク ©Marco Borggreve
ミヒャエル・ザンデルリンク ©Marco Borggreve
 『父子鷹(おやこだか)』は、勝海舟とその父、勝小吉を主人公にした、子母澤寛の名作小説のタイトルだ。現在の指揮者界には、この作品を思い出さずにはいられない父と子が何人かいる。故アルヴィドとマリスのヤンソンス父子はその筆頭だろう。ネーメとパーヴォ、クリスチャンのヤルヴィ一家もいる。東欧、ロシアなど、旧共産圏にその例が多いのは面白いところだ。
 名指揮者、クルト・ザンデルリンク(19
12〜2011)の3人の息子も、いま指揮者として活躍中である。トーマス(1942年生)、シュテファン(1964年生)、そしてミヒャエル(1967年生)。このなかで、いま最も期待されているのが、三男のミヒャエルだ。名門ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の首席を務めたほどのチェロの名手だが、21世紀に入ると父と兄の後を追って指揮者に転向、2011年にドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に迎えられた。
 そして、旧東独時代にマズア、ケーゲル、ヤノフスキなど職人肌のシェフに鍛えられてきたこのオーケストラに、いま新風を吹き込みつつある。伝統を尊重しつつ、ピリオド・スタイルもとりいれ、キリリと引きしまったそのベートーヴェン演奏は、13年の来日公演でも高く評価された。
 今回は《フィデリオ》序曲、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」、そして交響曲第7番という、オール・ベートーヴェン・プログラムだけに、その清新なスタイルはさらに徹底されるだろう。「皇帝」での清水和音との共演も楽しみだ。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年5月号から)

7/6(月)19:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp

他公演
6/29(月)札幌コンサートホールKitara、7/2(木)武蔵野市民文化会館、7/3(金)愛知県芸術劇場コンサートホール
7/4(土)ザ・シンフォニーホール、7/5(日)所沢市民文化センターミューズ、7/8(水)東京文化会館
問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040