広上淳一&日本フィルが、佐藤聰明の「バスクラ協奏曲」を世界初演!

バスクラリネットの新たな地平を切り拓くフランス・ムソーが登場

左:広上淳一 ©Masaaki Tomitori
右:フランス・ムソー ©Keke Keukelaar

 快走を続ける日本フィルの7月東京定期には、2021年よりフレンド・オブ・JPO(芸術顧問)を務める広上淳一が登場する。広上といえば、これまでオペラとはあまり縁のなかった日本フィルと「オペラの旅」シリーズをスタートさせ、つい先日、第1回となるヴェルディ《仮面舞踏会》を大成功に導くなど、大きな成果を挙げつつある。

 今回の定期は時期的に七夕に近いということで、ホルストの代表作・組曲「惑星」をメインに据える。全7楽章のそれぞれが太陽系の惑星をテーマにしているが、作曲にあたってホルストは占星術を参照し、例えば「土星」は“老いをもたらすもの”、「天王星」は“魔術師”といったように、各惑星を華麗な管弦楽法で個性豊かに描いている。中でも軍神マルスを描いた「火星」の荘厳なテーマや、快楽の神ジュピターが駆ける「木星」のメロディは多くの方にとって聞き覚えがあるのではないだろうか。

 前半には独自の宇宙観を表現した創作を続ける佐藤聰明のバスクラリネット協奏曲の世界初演が行われる。本作は今回独奏を務めるバスクラリネット奏者で作曲家でもあるフランス・ムソーが佐藤の音楽に惚れ込み、自ら委嘱した作品だ。コロナ期間中に演奏を予定していたが、今回ようやく実現の運びとなった。作品は画家ファン・ゴッホへのオマージュで、静寂の中に祈りを覚えさせる作風だという。占星術を元に宇宙をダイナミックに描いたホルストと、一瞬の中に永遠を見出す佐藤。洋の東西のコントラストも見どころになりそうだ。

文:江藤光紀

(ぶらあぼ2025年7月号より)

広上淳一(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団 第772回 東京定期演奏会
2025.7/11(金)19:00、7/12(土)14:00 サントリーホール

問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://japanphil.or.jp