有田正広(指揮) クラシカル・プレイヤーズ東京

名曲が瑞々しい響きにより新たな魅力を纏う


 我が国の古楽界の先駆者であり、近年はオリジナルとモダン双方の楽器の特性を生かしたマルチな活動を展開するフルートの有田正広。その有田が、指揮者として率いるオリジナル楽器オーケストラ、クラシカル・プレイヤーズ東京(CPT)が、日本を代表するピアニスト、仲道郁代と共演してのベートーヴェンの協奏曲第3番に加えて、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」やモーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」第1楽章と意欲的なプログラムに対峙。今回も、多彩な選曲と繊細な響きで空間を満たし、日本の古楽シーンに新たな1ページを記す。
 CPTは、日本初の本格的オリジナル楽器オーケストラとして1989年春に結成され、約20年にわたって先鋭的な活動を続けた「東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ」のメンバーを中心に、2009年6月に組織された。特に古典派以降の作品に焦点を当て、これまで日本ではオリジナル楽器で演奏されなかった作品に果敢に挑戦するなど、野心的な取り組みを展開。仲道とも、国内で初めて、ショパンの2つのピアノ協奏曲をオリジナル楽器で演奏するなど、これまで4度にわたって共演を重ねて来た。
 5度目のコラボレーションとなる今回、仲道は自身所蔵のジョン・ブロードウッド製作のフォルテピアノ(ロンドン/1816年製)を駆り、ベートーヴェンの協奏曲第3番に挑戦。また、前回公演に引き続き、名手・豊嶋泰嗣がソロ・コンサートマスターを務める。さらに、ロマン派の名曲からメンデルスゾーン「イタリア」も披露。日本ではロマン派作品のオリジナル楽器による実演はまだ少なく、貴重な機会となろう。ここへ、モーツァルトの佳品の端正な響きも共鳴してゆく。聴き慣れた名曲も、オリジナル楽器の瑞々しい響きによって、きっと新たな魅力を纏うはずだ。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年7月号から)

7/12(日)15:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296
http://www.geigeki.jp