巨匠シュロモ・ミンツが都響メンバーと紡ぐ2つの四季

シュロモ・ミンツ ©Andrei Birjukov

 すぐれた音響で知られる東京文化会館小ホールにトップレベルのアーティストを招く「プラチナ・シリーズ」。8月9日の第1回公演では名ヴァイオリニスト、シュロモ・ミンツが登場し、東京都交響楽団メンバーによる弦楽アンサンブルと共演する。早くから国際的な名声を確立し、ベルリン・フィルやウィーン・フィルなど著名なオーケストラと共演を重ねてきたミンツも、今や大ベテランとなった。ヴィヴァルディとピアソラのふたつの「四季」で円熟の境地を披露する。弦楽アンサンブルの中心となる都響の第1ヴァイオリン奏者、及川博史はミンツの愛弟子。師弟の共演だ。

 春夏秋冬を題材にした楽曲は少なくないが、その筆頭に挙がるのは、なんといってもヴィヴァルディの「四季」だろう。それぞれの季節の情景が描写的な音楽によって、生き生きと表現される。ミンツの美音が最大限に生かされるにちがいない。奏者によってさまざまなスタイルによる演奏が可能な作品であるが、ミンツはどんな「四季」を奏でてくれるだろうか。

 もうひとつの「四季」は、ピアソラによる「ブエノスアイレスの四季」。もともとはバンドネオンを含む五重奏のために書かれたタンゴ作品だ。ギドン・クレーメルがヴィヴァルディの「四季」と合わせて『エイト・シーズンズ』として発表したことから、クラシック音楽界でも広く知られるようになった。クレーメルをはじめ、よく使われるのはデシャトニコフ編曲版だが、今回用いられるのはファビアン・ベルテロ編曲版。ひと味違った、南半球の「四季」を体験したい。

文:飯尾洋一

(ぶらあぼ2025年6月号より)

プラチナ・シリーズ第1回
シュロモ・ミンツ(ヴァイオリン)&東京都交響楽団メンバー
~ヴィヴァルディ & ピアソラ 2つの四季~
2025.8/9(土)15:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 
https://www.t-bunka.jp