
この夏、びわ湖ホールがオペレッタの金字塔、レハール作曲《メリー・ウィドウ》を上演する(指揮:阪哲朗、管弦楽:日本センチュリー交響楽団)。これは「オペラへの招待」という、入門者からオペラ通まで満足させることを目的としたシリーズで、びわ湖ホール声楽アンサンブルの専属メンバーとソロ登録メンバーを中心にキャストが構成される。出演者は歌い、演じ、そして踊りまくる!
ストーリーはいたって簡単。大富豪と結婚したが、わずか数日で未亡人となったハンナ。「莫大な遺産を相続したハンナが外国人と結婚すると、資産が国外に流出して、国が破産する!」と、外交官ツェータ男爵はハンナの元カレ、書記官である伯爵ダニロに、彼女との結婚を求める。ダニロは、遺産目的の結婚だと周囲に思われるのは嫌だと躊躇。その後ハンナは別の男性との結婚を宣言するがダニロの動揺に気付き、ワルツを踊りながら愛を確かめ合う。遺言には「再婚するとハンナはすべての財産を失う」と書かれており、それは望むところと、ダニロは喜んで求婚。しかしその続きには「遺産は再婚相手のものになる」と書かれており、話は大団円を迎える。
主役のハンナ・グラヴァリ役はダブルキャスト。ゴールデンウィークに行われた「びわ湖の春 音楽祭 2025」オープニング・コンサートにも登場した、日本を代表するソプラノ並河寿美と、声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー船越亜弥だ。
このプロダクションの魅力や、共演者、演出家について並河に聞いたところ、次のように語ってくれた。
「びわ湖ホール声楽アンサンブルのソロ登録メンバーは、中堅として関西オペラシーンで活躍されている方もいらっしゃいますし、私が教員をしている大阪音楽大学の卒業生も多く、ご一緒できるのは本当に嬉しいです。学生時代、憧れの気持ちで見ていた先輩や師匠方がそうだったように、彼らに対ししっかりと態度で示さなければと思っています。
ダニロ役の迎肇聡さんと共演する機会は多いのですが、バリトンとソプラノということもあり、意外にもデュエットは今回が初めて。嬉しいような、恥ずかしいような(笑)。ダブルキャストのハンナ役・船越亜弥さんは、日本音楽コンクールで第1位を受賞するなど、大変な実力をお持ちの方。共に良い作品を作っていきたいです。演出の唐谷裕子さんはアシスタント時代から信頼のおける方です。発想が面白いので、彼女の演出にもご期待ください」
《メリー・ウィドウ》は、J.シュトラウスⅡ世作曲《こうもり》と並ぶウィンナ・オペレッタを代表する名作だけに、空前のブームだと言われるミュージカルのファンにも刺さるに違いない。並河は「びわ湖ホールのオペラで阪芸術監督とご一緒するのは今回が初めてで、楽しみにしています。全編、名曲揃いに加え、華やかな衣裳と煌びやかなステージ。私も大好きな作品なので、ぜひ会場でご覧ください」とコメント。自信に満ちた並河の表情からも、名演になることは間違いなし。この《メリー・ウィドウ》だけは、見逃すわけにはいかない。
文:磯島浩彰
(ぶらあぼ2025年6月号より)
びわ湖ホール オペラへの招待
レハール作曲 オペレッタ《メリー・ウィドウ》
2025.7/18(金)、7/19(土)、7/20(日)、7/21(月・祝)
各日14:00 びわ湖ホール 中ホール
問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136
https://www.biwako-hall.or.jp/