
右:ツォトネ・ゼジニゼ ©Sophia Melkidze
6月の新日本フィル定期は、今年没後50年のショスタコーヴィチの大作、交響曲第11番「1905年」を取り上げる。静かにデモ行進をしていた民衆が銃撃された、120年前の「血の日曜日」事件。後のロシア革命に繋がる事件をテーマとして、革命歌の引用も現れる描写的な構成のため、体制迎合作品のように見なされた時期もあったが、冴えわたる筆致による音楽の迫真性と奥行きある内容で、いまや彼の人気作のひとつに。凍てつく静寂から、壮絶極まりない轟音まで、オーケストラ表現の極北を体験できる、約60分ノンストップの大曲。不穏な時代の只中となった記念の年、この傑作に浸れる好機となる。
指揮はポーランド系ロシア人のアンドレイ・ボレイコ。深みと色彩感をたたえた演奏を聴かせる名匠で、2021年ショパンコンクール本選の指揮者として記憶する方も多いだろう。学生の頃に作曲者と会ったこともあるとのことで、そのボレイコの「11番」となれば、この時代ならではの無二のショスタコーヴィチ体験への期待が大きく膨らむ。
さらに注目を浴びそうなのが、ジョージア出身のわずか15歳の天才ピアニスト・作曲家、ツォトネ・ゼジニゼの登場。現代音楽作曲の天才少年として、3年前の母国のドキュメンタリー番組でバレンボイムに絶賛され、世界的にも知られる存在に。今回選んだ曲はストラヴィンスキーの「カプリッチョ」。新古典主義の作風による、多彩な楽想が連続する才気煥発な音楽で、ゼジニゼの現代音楽の才能、ピアニストとしての高い技巧と味わいを聴かせる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年6月号より)
アンドレイ・ボレイコ(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団
第664回 定期演奏会
〈サントリーホール・シリーズ〉
2025.6/28(土)14:00 サントリーホール
〈トリフォニーホール・シリーズ〉
6/29(日)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィルチケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp