若手大本命のラハフ・シャニがロッテルダム・フィルと来日!

©Marco Borggreve

Lahav Shani
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団 首席指揮者

ロッテルダム・フィルは成長への意欲に満ち、いま最高の状態にいます


 36歳の若さにして世界の名門オーケストラから引く手あまたの指揮者、ラハフ・シャニ。ピアニストとしても優れ、ジャズも演奏し、コントラバス奏者でもあるという、とにかく多才な人だ。

 シャニが楽団史上最年少でロッテルダム・フィル首席指揮者に就任したのは、2018年のこと。ここ数年で若いメンバーが加わり、さらに自身が父親になったことで、より良い関係性が育まれているという。

「彼らは、父親になった私から今までと違う想像力やエネルギーを感じるらしく、その変化をずいぶん気に入っているようです(笑)。一方私からすると、最近の彼らは成長への意欲に満ち、技術的なピークにいると感じます。今、最高の状態といえるでしょう」

 今度の日本ツアーでは複数のプログラムを用意し、彼らと演奏することで独自のものが生まれると感じる曲ばかりを選んだ。

「オランダの作曲家ワーヘナールや、いくつかの有名曲を組み合わせる形にしました。ブラームスの交響曲第4番は、ロッテルダム・フィルと最初期に共演した曲の一つ。ドヴォルザークの《新世界より》は、15歳の時、父が指揮するオーケストラのコントラバス奏者として弾き、大好きになった作品です。有名曲にはあらゆる解釈がありますが、ロッテルダム・フィルの前に立つと自然と新しいものが生まれ、幾度も聴いたことを忘れて、音楽の本質に耳を傾けることになるのです」

 ソリストには、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲で庄司紗矢香(6/22, 6/27, 6/28)を、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番でブルース・リウ(6/21, 6/23,6/25, 6/26, 6/29)を迎える。

 実はプロコフィエフ3番は、シャニがロッテルダム・フィルと弾き振りをしているレパートリーでもある。ピアノもこれほどのレベルで弾く指揮者となった経緯を、自身はこう語る。

「若い頃はピアニストを目指していましたが、高校でコントラバスを始めると、演奏しながらさまざまな声部を聴くようになり、音楽への理解が変わって、オーケストラ音楽に恋をしてしまいました。それからベルリンで指揮を学ぶようになったわけですが、一時期ピアノを疎かにしていました。あるときバレンボイムに会う機会があり、彼がピアノで何か弾くようにというので聴いてもらったところ、こう言われたのです。

“君には指揮者として未来があるけれど、もし私が君の立場ならピアノはやめないし、本気で取り組む。将来やはり指揮をしたいと思えばその道を選べばいい。でもその逆……20代前半の今指揮に専念して、数年後にピアノも弾きたいと思っても、それは難しい。指揮とピアノはそこが決定的に違うのだよ”

 私はバレンボイムが自分のピアノを気に入ってくれたことがまず嬉しかったし、他でもない、ピアノと指揮を両立するお手本の言葉ですから、すぐ再びピアノを勉強しました。それにピアニストは、オーケストラの複数の奏者を想像しながら演奏する習慣があるので、指揮者になることは、他の楽器奏者より楽といえるでしょうね」

 シャニは現在、生まれ故郷、イスラエル・フィルの音楽監督も務める。先代の音楽監督だったメータもまた、彼に影響を与えた一人だ。

「私がベルリンに越したとき、メータは、できるだけ人のリハーサルを聴くようにと言いました。その教えに従い毎日リハーサルに通っていると、指揮者がどうするとどんな結果が生まれるのか、優れたマエストロはどのように目指す音楽を達成するのかが見えてきたのです」

 そこで発見したのは、「偉大な指揮者はその個性により、何も言わなくても音を変えられる」ということ。

「強い考えを持ち、多くを感じていれば、オーケストラに自然と自分の考えを投影できます。私とロッテルダム・フィルについていえば、普通のオーケストラとなら時間をかけて語る必要がある場面でも、言葉を超えたコミュニケーションを通じ、あらゆる音を鳴らせるのです」

 その関係は「まるで一つの心を持っているといえるほど」とシャニ。最高の状態かつ相性抜群のコンビを、会場で聴き届けたい。

取材・文:高坂はる香
(ぶらあぼ2025年6月号より)

Information】
ラハフ・シャニ指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

2025.6/23(月)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール 
6/26(木)、6/27(金)各日19:00 サントリーホール
6/28(土)14:00 横浜みなとみらいホール


出演/ブルース・リウ(ピアノ 6/23、6/26)、庄司紗矢香(ヴァイオリン 6/27、6/28)
曲目/
[6/23]ワーヘナール:序曲「シラノ・ド・ベルジュラック」 op.23
      プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 op.26
      ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 op.98
[6/26]ワーヘナール:序曲「シラノ・ド・ベルジュラック」 op.23
     プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 op.26
     ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」 ホ短調 op.95
[6/27]モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》序曲 K.492
     ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61
     ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 op.98
[6/28]モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》序曲 K.492
     ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61
     ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」 ホ短調 op.95

問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
https://www.japanarts.co.jp


他公演 
2025.6/21(土) 大阪/ザ・シンフォニーホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)
6/22(日) 愛知県芸術劇場 コンサートホール(CBCテレビ事業部052-241-8118)
6/25(水) ハーモニーホールふくい(0776-38-8282) 
6/29(日) 所沢ミューズ アークホール(04-2998-7777)
※公演により出演者、プログラムが異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。