
今年はラヴェル生誕150年。パリでは大規模な展覧会も開催され、世界中が彼の音楽で満たされる一年になることだろう。この作曲家の主要作品は、オーケストラ、室内楽、そしてピアノ・ソロなど多岐にわたるが、ラヴェルを得意とするピアニストの中でも際立つ存在がパリ生まれのパスカル・ロジェ。早くからその才能の誉れ高く、パリ音楽院卒業後、ロン=ティボー国際コンクール優勝、17歳でデッカ専属レコーディング・アーティストに就任した。以後、世界各地でコンサートを開催しており、プーランク、サティ、フォーレ、サン=サーンスにくわえ、特にラヴェルとドビュッシーの演奏は、多彩な響きと典雅で洒脱なスタイルをもち、他の追従を許さない。
来日公演もたびたび行い、日本の音楽ファンにフランス・ピアニズムの神髄を届けてきたロジェ。7月22日開催のリサイタルは、ラヴェルとドビュッシーという王道プログラムだ。ラヴェル作品からは、広く親しまれている「亡き王女のためのパヴァーヌ」「ソナチネ」。そしてこの作曲家ならではの冴えたテクニックと響きに彩られた「鏡」は、第1曲〈蛾〉から神秘的な響きに引き込まれてしまうが、第4曲〈道化師の朝の歌〉はスペイン情緒が濃厚に感じられる名作である。そしてドビュッシーでは「前奏曲集 第1巻」を取り上げる。〈亜麻色の髪の乙女〉〈沈める寺〉など、よく知られた曲も含まれており、豊穣な世界へといざなってくれる。ロジェの名演が待ちどおしい。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2025年5月号より)
パスカル・ロジェ ピアノ・リサイタル
2025.7/22(火)19:00 浜離宮朝日ホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831
https://www.pacific-concert.co.jp
他公演
2025.7/24(木) 大阪/ザ・フェニックスホール(06-6363-7999)
7/27(日) 愛知/宗次ホール(052-265-1718)