「神戸国際フルートコンクール」を中心に、市内各所で約100公演を開催
神戸に新たな音楽祭「KOBE国際音楽祭」が誕生する。4年に1度開催される「神戸国際フルートコンクール」を核として、国内外のトップアーティストや地元演奏家たちによる約100公演が、7月中旬から9月中旬にかけて、市内各地で開催される。多彩なプログラムのなかから、注目公演を挙げてみたい。

右:アンドレアス・オッテンザマー ©Halina Jasinska
まず、音楽祭の開幕を飾るのは「エマニュエル・パユ プロデュース KOBE国際音楽祭2025 オープニング・コンサート」(7/12)。ベルリン・フィルの首席奏者であり世界最高のフルート奏者として不動の人気を誇るパユが登場する。パユは神戸国際フルートコンクール第2回で第1位を獲得しており、かねてよりこの街との縁は深い。神戸市室内管弦楽団と共演するにあたって、パユが指揮者に指名したのはアンドレアス・オッテンザマー。ベルリン・フィル首席クラリネット奏者から指揮者に転身したかつての同僚だ。イベールのフルート協奏曲、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」他が演奏される。さらに第10回神戸国際フルートコンクール第3位の石井希衣、第8回同コンクール第3位の竹山愛も出演して花を添える。

一風変わった音楽風刺劇《オスペダーレ》(演奏会形式)も見逃せない(7/26)。こちらは神戸市出身のソプラノ歌手・鈴木美登里が率いる声楽アンサンブルのラ・フォンテヴェルデが2023年9月に東京で復刻・日本初演を行ったイタリア17世紀のコメディ。音楽学者・松本直美がヴェニスの図書館で発見した作者不詳の楽譜をもとにした上演で、医者のもとを恋わずらい、愚か者、官吏、貧者が順に症状を訴えて、治療法を告げられるという筋立てを持つ。現代にも通じるテーマを扱ったコメディだ。ラ・フォンテヴェルデにバロック・ハープの伊藤美恵、チェロの鈴木秀美、チェンバロの上尾直毅が加わる。

そのほか、フラウト・トラヴェルソの柴田俊幸とフォルテピアノのアンソニー・ロマニウクのコンビは酒蔵を改装したホールで「発酵する古楽」と題した意欲的な公演を開く(8/23)。バッハから坂本龍一まで、プログラムは縦横無尽。関西のバロック音楽シーンをリードしてきたテレマン室内オーケストラは、バッハのブランデンブルク協奏曲全曲をとりあげる(7/19)。ギターの荘村清志とフルートの工藤重典の重鎮デュオは、古典とスペイン音楽を組合わせる(7/17)。第11回神戸国際フルートコンクール スペシャルナイト・ガラ(9/5)では、ティモシー・ハッチンスやアンドレア・オリバらコンクール審査員に加え、運営委員長の神田寛明が出演。スーパープレイヤーたちの夢のコラボレーションが実現する。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2025年5月号より)
KOBE国際音楽祭2025
2025.7/12(土)~9/14(日) 神戸文化ホール、西神中央ホール、神戸朝日ホール、神戸新聞松方ホール、神戸酒心館ホール 他
問:神戸市民文化振興財団 事業部 フルートコンクール事業課078-361-7930
https://www.kobe-bunka.jp/ongakusai/