ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団

ブルックナーでも卓越した才能を発揮

ジョナサン・ノット ©K.Miura
ジョナサン・ノット ©K.Miura
 ジョナサン・ノットが東京交響楽団音楽監督に就任し2シーズン目に入った。6月のプログラムのメインは、ブルックナーの交響曲の中でも伸びやかな表現で人気の第7番が取り上げられる。聴きどころをまとめてみよう。
 まず、ノットはバンベルク響という中欧の上質なオーケストラで音楽監督を長く務め、近年では同団とのルツェルン音楽祭での《指環》全曲上演などで大きな成果を上げている。現代もので知られるノットだが、独墺のがっちりとした演目にも躍進が目覚ましい。一方、東響も中欧のオーケストラを思わせる、落ち着いた色合いのふっくらとしたサウンドに特徴がある。緊張感を保ちながらも爽やかで口当たりがいい演奏が期待できそうだ。
 2つめのポイントは、ブルックナーとワーグナーの絆を想起させる選曲。ノットはすでに東響と昨年12月に、ワーグナーに捧げられたブルックナーの交響曲第3番を取り上げている。今回演奏する第7番のアダージョでは、作曲時に逝去したワーグナーへの葬送行進曲が鳴り響くのだ。
 最後のポイントは、東響の新旧両音楽監督の個性の違いを確認できる点だ。ブルックナーは前任の音楽監督ユベール・スダーンも得意とし、特に第7番はこのコンビでの録音が発売されている。
 今回のプログラムでもう一点見逃せないのが、R.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」だ。第2次大戦によって焼野原になったドイツに向けられた哀惜の思いが、ソリスティックに動く23人の弦楽奏者たちによって精緻に織られていく。東響弦セクションの美音に加え、複雑なテクスチャを明晰に聴かせるノットの本領も発揮されるはずだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年6月号から)

第631回 定期演奏会
6/6(土)18:00 サントリーホール
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