Noism1 近代童話劇シリーズvol.1『箱入り娘』

金森穣が生み出す新たな“童話劇”

見世物小屋シリーズ第3弾『Nameless Hands〜水の庭、砂の家』 ©Kishin Shinoyama
見世物小屋シリーズ第3弾『Nameless Hands〜水の庭、砂の家』
©Kishin Shinoyama
 金森穣率いるNoism1が設立11年目の今年、スタジオ規模の小空間での“近代童話劇シリーズ”をスタートさせる。第一弾は新作『箱入り娘』。原作はバルトーク作曲&バラージュ台本による1917年初演のバレエ『かかし王子』だ。金森は「サイトウ・キネン・フェスティバル・松本2011」で、同じバルトーク&バラージュのオペラ『青ひげ公の城』とバルトークの舞台音楽『中国の不思議な役人』を演出・振付している。『かかし王子』では、王子が王女の気を引くために自身に似せたかかしを作るが、王女はかかしに魅了され、王子に目もくれない。やがてハッピーエンドを迎えるものの、ここには芸術家と作品の皮肉な関係が暗示されている。金森はそうした原作を踏まえつつ、独自の解釈と登場人物を加えるという。
 100年前に比べて現代では「一つの箱の位相、すなわち自己を形成する家族、村、国家といった箱の位相が外側に広がった」とする金森は、今回の『箱入り娘』で、“箱入り娘”と“無職のゲイジツカ”を登場させる。「2人は仮想空間で出会い、現実空間で傷つけあい、宇宙空間ですれ違います。彼らの心(箱)は行くあてもなく、理想(箱)と現実(箱)の間を彷徨います」(プレスリリースより)。1936年にベンヤミンは『複製技術時代の芸術』を著したが、ネット社会では、作者/作品の関係もオリジナル/コピーの違いも、より混迷化・複雑化している。そんな現代が、ある意味ではアナログな芸術とも言えるダンスでどのように表現され、遠藤龍の映像はどう作用するのか? 新たな“童話劇”の誕生に期待したい。
文:高橋彩子
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年5月号から)

6/6(土)〜15(月)、7/24(金)〜8/1(土) りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 スタジオB 
問:りゅーとぴあ025-224-5521
6/22(月)〜6/28(日) KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ 
問:チケットかながわ 0570-015-415
7/18(土)18:00、7/19(日)17:00 金沢21世紀美術館 シアター21 
問:金沢21世紀美術館 交流課076-220-2811 
http://noism.jp