ホールの15周年を祝う、巨匠渾身の大交響曲
ロシアの巨匠ユーリ・テミルカーノフは、文京シビックホールを特別視している。2011年、手兵サンクトペテルブルク・フィルを率いて初登場した際、その音響と聴衆の反応に感銘を受けた彼は、「合唱が加わるマーラーの交響曲第2番『復活』を、ぜひこのホールで取り上げたい」と要望。14年の日本ツアーにおいて、同曲を唯一同ホールで披露し、壮絶な演奏を展開した。そのとき金管と打楽器のバンダを受け持ったのが、読響のメンバーたち。彼らの見事なアンサンブルは、聴く者全てを感嘆させた。そしてその成果を踏まえ、今度は読響を振って同ホールに登場する。
演目はマーラーの交響曲第3番。巨大編成のオーケストラと独唱&合唱を要する、全6楽章の超大作である。“自然への賛美”を表わす音楽は、精妙な響きや色彩感などサウンド的な妙味を満載。大河のようなフィナーレは感動必至だ。むろんこれは、「『復活』に続いてマーラーの声楽付き交響曲を文京シビックで披露する」というテミルカーノフ渾身の選曲。日本を代表するメゾソプラノ、小山由美に新国立劇場合唱団ほか声楽陣も万全の態勢で臨む。
名門サンクトペテルブルク・フィルの芸術監督を25年以上務めるテミルカーノフは、今年77歳。今回も当然、芳醇で奥深い円熟の表現が期待される。また読響は近年、重厚かつゴージャスなサウンドに精緻さを加え、3月には12年ぶりの欧州公演で成功を収めたばかり。00年以来再三共演し、「読響の音を変えた」と賞される巨匠が、充実顕著な今の読響を指揮していかなる名演を聴かせてくれるのか?大いに楽しみだ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年6月号から)
6/7(日)15:00 文京シビックホール
問:シビックチケット03-5803-1111
http://bunkyocivichall.jp
同プログラムの他公演
6/5(金)サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390