芸術選奨文部科学大臣賞に指揮者の下野竜也氏ら

  文化庁は12日、平成24年度(第63回)芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞を発表した。

 音楽部門では、ハープ奏者の篠崎史子(しのざきあやこ)と指揮者の下野竜也(しものたつや)が文部科学大臣賞に、カウンターテナーの彌勒忠史(みろくただし)が文部科学大臣新人賞に選ばれた。

 篠崎史子は、日本を代表するハーピストとして内外の第一線で活躍し、昨年のリサイタル・シリーズ「ハープの個展」40周年を記念した演奏会では、3人の作曲家、権代敦彦、西村朗、野平一郎にハープと管弦楽のための新作を委嘱、初演するなど、特に同時代の日本人作曲家への新作委嘱は新たなレパートリーの確立に大きく寄与したと高く評価された。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 また、下野竜也は、昨年、初演されてからわずかの、芸術的にも技術的にも難しいライマンのオペラメデアを巧みな指揮で成功に導き、この作品の価値、さらには現代オペラの価値を、日本の聴衆に認識させたことが贈賞理由としてあげられている。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 新人賞の彌勒忠史は、日本に数少ない本格的カウンターテノールとして、アントネッロなどと組んだ公演で独特のプログラムを披露し、中世やルネッサンス、バロックの声楽曲で抜群の表現力を示しただけではなく、「コンポージアム2011」でのシャリーノ作品や、日生劇場でのオペラ《メデア》の使者役で、現代作品にも果敢に取り組み、集中力の強く優れた完成度の歌を美しい声で響かせるなど、志の高い幅広い活動を行ったことが評価された。

 
 
 
 
 
 
 
 

 評論等部門では、音楽評論家の石田一志(いしだかずし)が文部科学大臣賞に選ばれた。

 石田一志は著書『シェーンベルクの旅路』で、二十世紀前半の西洋音楽の発展に決定的な影響を与えた作曲家シェーンベルクの芸術的人生を、作品論を軸に活き活きと描き、アメリカ亡命前後のシェーンベルクが抱えていた「芸術と宗教」、「芸術と政治」等の諸問題を浮き彫りにするなど、ライフワークともいえる力作と認められた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 芸術振興分野では、音楽家の有馬純寿(ありますみひさ)が新人賞に選ばれた。

 有馬純寿は、電子音響を含む現代音楽コンサートに必須の人物として高く評価されている。新しい活動領域は、海外を含めますます広がりを見せ、今年度は檜垣智也、橋本晋哉、松平敬とのコラボレーションが高く評価できるとされた。
 
 なお、贈呈式は18日に東京都内で行われる。

 
 
 
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(■授賞作品 彼方、そして傍らに〜ハープと室内オーケストラのための〜(2012)(篠崎史子委嘱作品))