東京オペラシティ B→C172 本條秀慈郎(三味線)

日本の伝統音楽と絡まり結晶していくバッハの音楽

 旬の若手演奏家が、バッハと現代音楽をつなぐユニークなプログラムを組む、東京オペラシティの『B→C』シリーズ。邦楽器もこれまで笛、尺八、箏などが登場したが、今回はなんと三味線の登場だ。
 注目の若手、本條秀慈郎は桐朋学園短大で本條秀太郎に師事。師は現代音楽との交流をはじめ幅広い活動で知られているが、秀慈郎もその精神を汲んで、古典だけではなく現代作曲家への委嘱や洋楽器とのコラボレーション、さらには舞台、舞踊など様々なジャンルを横断することで、伝統楽器の新たな可能性を開拓している。
 5月のリサイタルも、バッハとコンテンポラリーの併置にとどまらない意欲的なもの。縦横無尽に伏線を張り巡らせたプログラミングは、伝統楽器の技法的な広がりだけではなく、西洋音楽の表現が日本の伝統と絡まり結晶していく様を体験し理解させてくれる。1680年代に楽譜が発行された三味線音楽「獅子踊り」とバッハの「音楽の捧げもの」を並べて、バッハと同時代の江戸を結びつける。「音楽の捧げもの」では兄弟子・本條秀五郎とのデュオによる三味線の「2声カノン(謎カノン)」を披露。およそ誰も考え付かなかったであろうアイディアだ。後半には大ベテラン・野坂操壽が演奏する二十五絃箏との二重奏(新実徳英とヴィラ=ロボス作品)もある。本條の演奏は躍動感あふれる気迫に満ちたもので、巨大な二十五絃箏との協奏ではシンフォニックな音のシャワーが客席に惜しみなく注ぎかけられるはずだ。このヴィヴィッド感は、ぜひライヴで味わいたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年5月号から)

5/12(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
http://www.operacity.jp