福田成康(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)専務理事)

「公開録音コンサート」は演奏家とお客様とで“作品を応援する”コンサートです

Photo:Tsutomu Shiroma/Tokyo MDE

Photo:Tsutomu Shiroma/Tokyo MDE

 「ピティナ ピアノ曲事典」は誰でも無料で使えるネット上の事典だ。これは一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)が立ち上げた、ピアノ曲のあらゆる情報を網羅していこうとする意欲的なプロジェクトでもある。巣鴨駅にほど近いピティナのオフィス内の東音ホールでは、この事典の音源を充実させるため、定期的に「公開録音コンサート」が開かれている。2014年は28回開催。演奏は国内外で活躍するピティナ会員のピアニストだ。これまでに延べ1020トラックの音源を収録してきた。
「コンサートとはふつう、奏者が得意な、あるいは聴衆に人気のある曲目が披露されますが、このシリーズは違います。事典内のコンテンツを充実させることに狙いがあるため、普通ならあまり聴くことのできない作品も演奏されます」
 そう語るのはピティナ専務理事の福田成康。事典を始めた当初は、奏者の好意で寄せられる音源や、演奏を依頼して収録したものをアップしていたが、「クオリティに問題があったり、コストをかけても曲数がなかなか増えていかない状況が続いた」と振り返る。
「それで会員のピアニストの力を借りて公開でコンサートを定期的に開き、聴衆の方々にもご支援いただきながら音源を増やすことにしました。ただし奏者は、自分のリサイタル代わりにお得意の曲を弾けるわけではありません。あくまで事典の音源拡充に貢献する姿勢が求められるのです。自分のレパートリーとは関係のない作品を人前で演奏し、しかも録音として残す。ピアニストにとっては従来の演奏活動のあり方とは違い、シビアです。そこに登場したのが、若手ピアニストの赤松林太郎さんです。彼は、作品ありきの公益事業に意欲を燃やしてくれる、先進的な考え方の持ち主。昨年度は6回出演し、バルトークの作品など様々な録音に貢献してくださいました。さらにミラノ在住の黒田亜樹さんも、自分のお弟子さんたちとジョイントでスクリャービン作品を網羅する企画を打ち出してくれました。また、クレメンティ協会、カプースチン協会、アレンスキー協会など、作曲家の名を冠した協会の人たちが名乗りをあげてくれるようになり、徐々に事典らしい録音プロジェクトへと発展してきました」
 目標は1年に3000トラック。
「まだまだ足りていません。会員の積極的な参加を募っています。また、この事業に関わっていただける聴衆の方々の協力も必要です。入場料は『後払い方式』です。価格の決まったチケットを『期待値』として買うのではなく、演奏を聴いて心にわき起こった『感動をありがとう』という思いを、その人なりに価格という形で表現してもらいたいからです」
 音楽文化の活性化を「私に課せられた使命」と語る福田氏は、「人々の記憶に一曲でも多くのピアノ曲を刻みたい」と願う。今年も公開録音コンサートはポーランド、日本、ロシア、ハンガリーのピアノ曲などを含む、実に多彩なプログラムで開催される。
 新しいピアノ曲と出会い、そして事典充実に加勢できる、そんな参加型のコンサートに定期的に足を運んでみるのはいかがだろうか。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年5月号から)

ピティナ・ピアノ曲事典 公開録音コンサート
今後の予定

5/12(火)20:00 「古典と出会うⅢ ベートーヴェン誕生」
赤松林太郎 他
5/14(木)19:00 「アルペジオーネ・ソナタ他」
島田彩乃、高木慶太※
5/30(土)14:00 「世界に発信!日本のピアノ曲」
秦はるひ 他
6/19(金)19:00 「ロシア音楽とリスト」
ミハイル・カンディンスキー
7/6(月)11:00「バルトークのミクロコスモス Vol.2」
赤松林太郎
東音ホール            
※のみチェロ、他はピアノ
問:ピティナ 03-3944-1583
http://www.piano.or.jp/concert/public