東京フィルが2025シーズン定期演奏会のラインナップを発表

 東京フィルハーモニー交響楽団は10月17日、2025シーズン定期演奏会のラインナップを発表した。名誉音楽監督チョン・ミョンフン、首席指揮者アンドレア・バッティストーニ 、特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフの3名を軸に、全8回の定期公演を予定している。

上段左より:チョン・ミョンフン (C)上野隆文、アンドレア・バッティストーニ (C)三浦興一、ミハイル・プレトニョフ (C)上野隆文
下段左より:尾高忠明 (C)上野隆文、ピンカス・ズーカーマン (C)Cheryl Mazak、チョン・ミン (C)Lee Dayoun

 シーズン開幕(2月定期)を飾るのは、チョン・ミョンフン。オール・ベートーヴェン・プロで「英雄」をメインに置き、「ヴァイオリン、チェロとピアノのための三重協奏曲」では自らピアノを演奏する。ヴァイオリンは2022年ヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール優勝の前田妃奈、チェロは21年第75回ジュネーヴ国際音楽コンクールで15歳の若さで第3位入賞を果たしたハン・ジェミンという新進気鋭の2人。
 マエストロが若き俊英たちからどのような音楽を引き出してくれるのかが楽しみだ。

 チョン・ミョンフンはシーズン・フィナーレとなる10月にも登場。バーンスタイン「シンフォニック・ダンス」に、ガーシュウィン「ラプソディー・イン・ブルー」、プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」をプログラム。ソリストには、ジャズ・ピアニストとして第一線で活躍し、クラシックでも国内外のオーケストラと共演を重ねている小曽根真を迎える。シンフォニック・ジャズの代名詞「ラプソディー・イン・ブルー」は小曽根にとって十八番の作品、エキサイティングな演奏で魅せてくれるに違いない。

 ミハイル・プレトニョフは自身が編曲したショパンのピアノ協奏曲第1番とチャイコフスキーの「眠れる森の美女」を選曲し、5月定期で指揮する。ピアノは幼少期よりロシアで学び、モスクワ音楽院に日本人初となるロシア政府特別奨学生として入学、19年6月に首席で卒業した松田華音。プレトニョフが認めたピアニストとして評価が高く、今回の共演にも注目が集まる。

 アンドレア・バッティストーニは3月、9月定期の2回の出演。3月はヒンデミットの生誕130年を記念し、「ウェーバーの主題による交響的変容」をメインに据え、ウェーバーの歌劇《オベロン》序曲にストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」(1947年版)を。9月には母国イタリアの作曲家ピツェッティによる「夏の協奏曲」とR.シュトラウスの「アルプス交響曲」を振る。マーラーをはじめとする大編成の作品で熱演を残しているバッティストーニだけに期待が膨らむ。

 4月定期では桂冠指揮者の尾高忠明が兄・尾高惇忠の作品、生誕150年を迎えるラヴェル、そしてエルガーをプログラム。尾高惇忠作品は、2023シーズンに「オーケストラのための『イマージュ』」を披露したが、今回は宮沢賢治の童話に基づくピアノ連弾曲「音の旅」のオーケストラ版より3曲の抜粋。ラヴェルは名曲「左手のためのピアノ協奏曲」を今年11月で88歳を迎える重鎮・舘野泉とともに。そして演奏機会の少ないエルガー未完の交響曲・第3番(A.ペイン補筆完成版)を、この曲の録音を複数残している尾高と東京フィルとの演奏で聴けることは嬉しい。

ピンカス・ズーカーマン (C)Cheryl Mazak

 その他客演陣にピンカス・ズーカーマン(6月)、チョン・ミン(7月)を迎える。
 ヴァイオリニスト、ヴィオリストのみならず指揮者としても活躍しているピンカス・ズーカーマン。東京フィルとは昨年5月、「渋谷の午後のコンサート」において指揮者、そしてヴィオラのソリストとして共演している。6月定期ではエルガーの弦楽セレナードやモーツァルト交響曲第41番「ジュピター」、そして弾き振りでハイドンのヴァイオリン協奏曲第1番を披露。
 巨匠チョン・ミョンフンを父にもつアソシエイト・コンダクターのチョン・ミンは、2022年以来の共演。ヴァイオリン協奏曲に交響曲第6番「悲愴」という名曲揃いのオール・チャイコフスキー・プロでタクトを執る。ヴァイオリン協奏曲では07年に第13回チャイコフスキー国際コンクールで優勝し、世界的に活躍している神尾真由子が独奏を担う。

 チョン・ミョンフン、プレトニョフ、バッティストーニはもちろん、共演する指揮者たちとも厚い信頼関係で結ばれている東京フィルの次なるシーズンも期待したい。

東京フィルハーモニー交響楽団
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