欧州の名門で活躍する俊英・アンジェリコが情熱的に描く読響の「第九」

 今年も多数の年末「第九」が開催される。中でも注目したいのが読響の公演だ。理由は、毎年異なる世界的指揮者が登場し、各々の個性を生かした名演を聴かせてくれる点、そして機能性抜群の管弦楽と豪華な声楽陣にある。

左上より:フランチェスコ・アンジェリコ ©Giancarlo Pradelli/中村恵理/清水華澄 ©Mariko Tagashira
ダヴィデ・ジュスティ ©Laura Broccolo/エギルス・シリンス ©Jānis Deinats

 今回の指揮者はフランチェスコ・アンジェリコ。1977年イタリア生まれの彼は、チロル響等のポストを歴任後、ドイツのカッセル歌劇場の音楽総監督を務め、バイエルン国立歌劇場やゲヴァントハウス管等に客演している。特にオペラに強く、カッセルでは《ニーベルングの指環》をはじめとする幅広いレパートリーで高い評価を得ている。つまり、イタリア人特有の“歌わせる”力とドイツ流の堅牢で重厚なテイストを併せ持ち、しかもドラマを構築する能力に長けている。これらはまさに「第九」の性格にピッタリだし、読響「第九」は2021年の出演がコロナ禍で叶わなかっただけに、今回は満を持しての舞台となる。ならば当然ドラマティックかつパッショネイトで感動に満ちた「第九」が期待される。

新国立劇場合唱団 ©読響

 ソリストは、欧州のトップ歌劇場に出演を続ける中村恵理(ソプラノ)、読響との名演奏も多い実力者・清水華澄(メゾソプラノ)、輝かしい声で欧州の観客を魅了するダヴィデ・ジュスティ(テノール)、バイロイト音楽祭など世界の檜舞台で活躍中のエギルス・シリンス(バス)と、年末「第九」の中でも際立つ。合唱も近年種々のコンサートで高度な歌唱を披露している新国立劇場合唱団ゆえに、すべてが磐石の態勢。ここは、最高の布陣で不朽の名作を堪能し、平和へのメッセージと新年への希望を噛み締めたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年11月号より)

フランチェスコ・アンジェリコ(指揮) 読売日本交響楽団 「第九」
2024.12/14(土)、12/22(日)各日14:00 東京オペラシティ コンサートホール
12/15(日)14:00 横浜みなとみらいホール
12/17(火)、12/18(水)各日19:00 サントリーホール
12/19(木)19:00 大阪/フェスティバルホール
12/24(火)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp