協力:読売日本交響楽団
読響の特別客演コンサートマスターとベルリンのコンツェルトハウス管弦楽団の第1コンサートマスターを兼務している日下紗矢子さんに、読響欧州ツアー3公演目となるベルリン・フィルハーモニーでの演奏会( 現地時間10/16 )を終えた翌17日に、お話を伺いました。
——ここまで3公演を終えました。どのような印象をお持ちですか?
読響メンバーは、日本からの長旅だったにも関わらずとても元気で、充実した演奏ができていると思います。ニュルンベルク、フィリンゲン=シュヴェニンゲン、ベルリンと響きの異なる3会場で演奏してきましたが、どの公演もとても集中していました。リハーサル中や本番前の時間などでの真剣な取り組みからも、このツアーを良いものにしたいという思いが溢れ出ているように感じています。私もこの欧州ツアーの重みのようなものを意識しながら過ごしています。
——日下さんが住んでいるベルリンでの演奏はいかがでしたか? 東京での公演と違いなどはありましたか?
ベルリン公演では私は前半だけの出演でしたが、舞台上からは東京でもベルリンでも、大きな違いは感じられませんでした。どんな場所でも、舞台に立てば、私たちは深い絆で結ばれています。ベストを尽くすことができたと思っています。
読響 欧州公演ツアー2024 ベルリン公演
2024.10/16(水)20:00 ベルリン/フィルハーモニー ※現地時間
出演
セバスティアン・ヴァイグレ(指揮) 読売日本交響楽団
クリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン)
プログラム
伊福部昭:舞踊曲「サロメ」から“7つのヴェールの踊り”
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 作品36
——ベルリン公演には、日下さんのベルリンでの友人や知人、演奏家なども多く訪れていました。読響の演奏は、ドイツの方にはどのように感じられたのでしょうか?
ベルリン公演のお客様の反応は、好意的なものが多かったです。オーケストラ全体として統率が取れていて、響きがクリアであることや技術的にも高水準であることが印象的だと褒めてくれる人もいました。初めて聴いた伊福部作品が素晴らしかったという声もありました。一方で、ベルリンのフィルハーモニーで聴くドイツのオーケストラに比べて、ある一定の枠をはみ出さずに、いささか小ぢんまりとした印象だったとの感想もいただきました。その辺りは、今後の私たちの課題になるかもしれません。
——今回のようなツアーは、オーケストラにどのような効果をもたらすと思いますか?
私がコンサートマスターを務めているベルリン・コンツェルトハウス管は、年1回の海外ツアーを行っています。それ以外に国内ツアーもあり、どちらもメンバーと一緒に移動などの時間を過ごすので、家族意識のようなものが生まれます。読響の今回の欧州ツアーでは、普段なかなか会話できない人と話すことができるなど、楽員同士がさらに親密な関係になっているように思います。このような機会が増えて、奏者間の連帯感が増せば、自然と音楽的なコミュニケーションにも活かされるように思います。ツアーでは会場ごとにお客様の反応も違いますし、食事をはじめ日本とは違う文化にも触れられるので、いろいろな出会いがあり、貴重な経験になります。例えば私にとって、ヨーロッパと日本とで時間の流れが、大きく違うんです。こちらの空気を感じるだけでも、個人としてもオーケストラ全体としても良いものをもたらすように思います。今回のツアーで吸収した多くのことが、日本での演奏にも良い影響を与えてくれると信じています。
——日下さんは、この欧州ツアーでは明日のハンブルク公演(取材:10/17)が最後となります。今後の抱負をお聞かせください。
まずはハンブルク公演に集中して、さらに良い本番となることに力を尽くしたいと思います。皆さんとてもポジティヴに取り組んでいるので、今後のミュールハイムとイギリスでの3公演も良いものになることを願っています。欧州ツアー後、私は11月末と12月上旬に東京で読響の公演にまた出演しますので、そこで今回の成長のようなものが感じられたら嬉しく思います。
読売日本交響楽団 欧州ツアー2024
10月13日(日) ニュルンベルク/マイスタージンガーハレ
10月14日(月) フィリンゲン=シュヴェニンゲン/フランツィスカーナー・コンツェルトハウス
10月16日(水) ベルリン/フィルハーモニー
10月18日(金) ハンブルク/エルプフィルハーモニー
10月20日(日) ミュールハイム・アン・デア・ルール/シュタットハレ
10月22日(火) ベイジングストーク/ジ・アンヴィル
10月23日(水) バーミンガム/シンフォニーホール
10月24日(木) ロンドン/カドガンホール
※日付は現地時間
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