フランス近現代音楽の諸相をひもとく深見まどかのスリリングなステージ

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 中学生の頃からフランス音楽の魅力にとりつかれ、藝高時代には、通学時に毎日のようにラヴェル、ドビュッシー、メシアンを聴いていたという深見まどか。藝大在学中にパリ国立高等音楽院へ留学し、8年ほど同地で学びつつ、内外で活躍してきた深見は、「フランス音楽への愛」に満ちたピアニストである。ベロフ、エル・バシャ、ピレシュら名手の薫陶を受け、フランス創作界をリードする気鋭の作曲家とも親交を結んだ彼女によるB→Cのリサイタルは、フランス音楽の現在を照射するスリリングなプログラムだ。テーマは「自然と自由」である。自然の普遍的なエネルギーが混沌とした社会に生きる人々を解放するという物語を紡ぎたいと語る。

 バッハの2曲の「トッカータ」以外は、オール・フランス近現代作品からの選曲になっている。ラヴェルの水の戯れ、ドビュッシーの映像 第2集は深見の十八番。マチュー・アカール(1988-2022)のプリペアド・ピアノのための「アルテファクト・エチュード第1番」から〈鏡のヴァリアシオン〉ではクリスタルな響きの世界が広がる。フィリップ・アタ(1993-)への委嘱新作は、異常気象や自然災害をめぐる哲学的な思索を含み、木魚やバンブーチャイムなど、自然素材の楽器の使用も予定していて、賑やかな一曲になりそうだ。注目の女性作曲家カミーユ・ペパン(1990-)からは「ナンバー・ワン」「虹色─氷」を取り上げる。ぺパンならではの極彩色の世界に深見が肉薄するのが楽しみだ。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2024年10月号より)

第28回 京都の秋 音楽祭 B→C バッハからコンテンポラリーへ 深見まどか ピアノリサイタル
2024.10/10(木)19:00 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ
問:エラート音楽事務所 075-751-0617
https://erato.jp


B→C バッハからコンテンポラリーへ265 深見まどか ピアノリサイタル
2024.10/15(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp